人間国宝と、次代を担う作家の工芸作品を展示する「わざの美――工芸が織りなす装飾の世界」(主催・読売新聞社、協力・日本工芸会)が〔2024年〕12月、東京・北の丸公園の旧近衛師団司令部庁舎で行われた。文化庁首都圏伝統工芸技術作品展等開催事業として、22点が14日間にわたり展示された。
入り口付近に展示された陶彫彩色「霊獣呉爾羅」(博多人形師、中村弘峰さん作)は、光沢を抑えた色合いで武骨な迫力。漆芸では、石川県輪島市の髹漆(塗り)の人間国宝・小森邦衛さんが、自ら竹を編み、目を文様として浮き出させた重箱を出品。陶芸や染織、金工でも至芸の数々が並んだ。
「作品の装飾性」という展示のテーマに対して出品者がつづった言葉も掲示され、「空間を装飾する」(竹工芸の四代田辺竹雲斎さん)、「杢目自体が自然の生み出した装飾」(木工芸の五十嵐誠さん)といったそれぞれの思いが披露されていた。
読売新聞ビル(東京・大手町)では、出品者によるトークセッションが開かれた。蒔絵の人間国宝・室瀬和美さんと、螺鈿を得意とする、しんたにひとみさんによる漆芸家対談では、金の粉をまいたり、貝を貼ったりする技法が1000年以上前から続いてきたことに、それぞれ敬意を示したうえで、今できる表現や自己の感覚を加えて進化させていることを強調していた。
(2025年1月5日付 読売新聞朝刊より)