企画展「ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―」が〔2023年3月〕21日、金沢市の国立工芸館で開幕する。陶磁、金工、ガラスなど工芸の各分野で活躍する作家20人がポケモンをモチーフに作品づくりに挑み、完成させた約70点を展示する。作家の横顔や作品の特徴、駆使した技巧などを紹介する。
(東京都)
吸い込まれるような黒色は塗ったわけではない。月光を浴びて進化したポケモン・ブラッキーの帯留め金具の色彩は、赤銅を薬液で煮て発色させて生まれた。輪っか模様の金も、瞳の赤も「全て金属の色。これが日本古来の技術です」。彫金の技を50年余り磨き続けてきた人間国宝は語った。
「ピカチュウはポケモンですか?」。出品依頼を受けた時、思わず尋ねた。戸惑うばかりだったが、ブラッキーの色合いを見て、「赤銅で再現できる」と挑戦を決めた。
厚さ1.2ミリの赤銅の板を表裏から
ブラッキーをモチーフにした作品3点のうち、悩んだのが、月光を浴びて眠る姿のブローチ。ブラッキーの後ろに月を置いてスケッチしてみたが、しっくりこない。思案するうちに、金の裏板を広めに取り、はみ出した金色で月の光を表現する手法に行き着いた。「表からうっすら線のように見えると品がよい」とされる裏板にとらわれない大胆なアイデアだ。
今回は、伝説のポケモン・ホウオウやルギアをあしらった香合2点も出品する。高肉象嵌で、ふたの表面にそれぞれの姿を1ミリほど盛り上げた状態で仕上げた。ホウオウの七色の翼の色合いの変化を、金を鏨で削って再現した。
「昔通りのままではなく、何か新しいことを」と、いつもその一心だ。ポケモンという題材を得て、持てる技術を惜しみなく注ぎ込んだ。「彫金でこんなこともできる、伝統の技術がここに入っているよ、というところをお見せしたいんです」
(おわり)
▽会期 〔2023年〕3月21日~6月11日。休館は月曜(5月1日は開館)、5月14日。問い合わせはハローダイヤル050・5541・8600。
▽主催 国立工芸館、NHKエンタープライズ中部、読売新聞北陸支社
▽特別協力 株式会社ポケモン
▽制作協力 NHKプロモーション
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(2023年3月15日付 読売新聞朝刊より)
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