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2023.3.8

【ポケモン×工芸展作品紹介 3】木の質感 自然な雰囲気

企画展「ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―」が〔2023年3月〕21日、金沢市の国立工芸館で開幕する。陶磁、金工、ガラスなど工芸の各分野で活躍する作家20人がポケモンをモチーフに作品づくりに挑み、完成させた約70点を展示する。作家の横顔や作品の特徴、駆使した技巧などを紹介する。

 

◇木工◇ 福田亨さん (28)

(埼玉県坂戸市)

立体木象嵌の技法で写実的な作品を制作している福田亨さん

<雨あがり>と題した作品は、むし・ひこうタイプのポケモンのアゲハントがモチーフ。湿った地面の上を飛ぶ様子を表現した。地面には小石が散らばり、葉に水滴がついたフキが生えている。

いつも通り素材はすべて木で、着色をせず天然の色や木目、質感を生かし、主に彫刻刀で制作した。「木で作ると本物と同じようにはなりませんが、木の持つ風合いが、かえって自然な雰囲気を生み出します」

自宅には、素材にする国内外の木150種類以上がある。アゲハントは6種類の木を使い、独自の立体木象嵌もくぞうがんの技法で作った。木象嵌は、ベースとなる木を下絵をもとにくりぬき、同じ形の木をはめて模様などを表現する手法で、立体作品に応用した。

福田亨〈雨あがり〉2022年 個人蔵 撮影・斎城卓

普段はチョウなど昆虫をテーマにしている。「昆虫は身近にいる生き物で格好がよく、多様な色彩がある。季節感もあります」。自分で採集した昆虫の標本を見ながら写実的な作品を制作している。

出品作品3点のうち<Floor>のモチーフは、むし・どくタイプのアリアドスで、畳の上をはう姿にした。伝統的な民芸品をノミで作る技法や、家具製作などで用いる指し物の手法を駆使している。残る1点<飛昇>は、ほのお・ひこうタイプのホウオウ。飛んだあとに虹がかかるという神話を、細い木を組んだ土台の色彩に生かした。

北海道小樽市出身。子どものころはポケモンのゲームに熱中した。道内の高校、京都の大学校で家具製作を学び、家具作家を目指していたが、大学校を卒業して間もなく自宅でできる工芸作品づくりに目を向けた。

出品作品は、木工の楽しさを味わってもらうため、それぞれ異なる技法も用いた。「ポケモンの生き生きとした姿を感じてもらいたい」と話した。

▽会期 〔2023年〕3月21日~6月11日。休館は月曜(5月1日は開館)、5月14日。問い合わせはハローダイヤル050・5541・8600。
▽主催 国立工芸館、NHKエンタープライズ中部、読売新聞北陸支社
▽特別協力 株式会社ポケモン
▽制作協力 NHKプロモーション
© 2023 Pokémon.
©1995-2023 Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc.

(2023年3月7日付 読売新聞朝刊より)

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