人気ゲーム「ポケットモンスター」シリーズに登場するポケモンを、多様な分野の工芸作家が自らの作品に仕立てて披露する「ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―」(読売新聞北陸支社など主催)が、金沢市の国立工芸館で〔2023年〕6月11日まで開かれている。本展に参加した、漆芸や染織など伝統工芸の作家たちはどう取り組んだのか。(文化部 森田睦、竹内和佳子)
「まさか自分に」と驚いたが、気軽に引き受けたポケモンとのコラボ。だが取りかかるとすぐ、難しさに気づいた。「固有のポケモンと自分の個性をどう融合させるか」に心を砕いた。
ポケモン選びでは、漆の特性を最大限に生かせるかを重視した。青いタツノオトシゴのようなタッツーとその進化形は平
つかんだポケモンの世界観を作品に凝縮させた。蓋物ではタッツーとシードラ、キングドラが渦を巻き戯れる。威風堂々と泳ぐ憧れの存在、キングドラは螺鈿で輝かしく表現した。
制作に通常の倍の約2年を費やした。出品する若い作家からも「刺激を受けた」といい、「年齢に関係なく挑戦することが大切。やれるだけのことはやった」と、充実の表情を見せた。
派手さを抑えた気品あふれる美しさが特徴の東京手描友禅は、江戸時代の創始とされる。京友禅などでは分業制となっている構想、図案、下絵、糸目
工房の窓から見える梅やメジロ、テレビで見る女優の服……。日本工芸会正会員で師匠の坂井教人さんから授かった言葉「創作の原点は感動である」を常に意識し、心動かされる物を見つけると、写真に撮ったり、スケッチしたりして創作のヒントにしている。
本展のために選んだポケモンは、羊のようなメリープと、その進化形のモココ、デンリュウだ。スマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」でも、相棒ポケモンにするほどのお気に入りという。
今回は所狭しと群れるメリープとモココをデザインした着物と、デンリュウが一時的にパワーアップしたメガデンリュウを「お太鼓」にあしらった帯を出品した。「色違いポケモンを紛れ込ませたり、メリープに関連する文字を忍ばせたりした」。細部まで、技と遊び心が行き届いている。
◇ ◇ ◇
本展には彫金の重要無形文化財保持者(人間国宝)の桂盛仁さんから若手まで、金工、漆工、木工、陶磁、ガラス、染織などの20作家の作品約70点が初公開されている。
室町時代に起こり、江戸に派生した彫金の流派の技を伝承する桂さんは、赤銅の黒色を生かしたブラッキーの
陶芸家の今井
国立工芸館の唐沢昌宏館長は、「世界中の人が知っているポケモンとコラボすることで、海外にも日本の工芸の素晴らしさを知ってもらえる」と話している。
※作品はいずれも2022年制作、個人蔵 撮影・斎城卓
(2023年3月22日付 読売新聞朝刊より)
「ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―」
▽会場 国立工芸館(金沢市)
▽会期 〔2023年3月〕21日~6月11日。休館は月曜(5月1日は開館)、5月14日。問い合わせはハローダイヤル050・5541・8600。
▽主催 国立工芸館、NHKエンタープライズ中部、読売新聞北陸支社
▽特別協力 株式会社ポケモン
▽制作協力 NHKプロモーション
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