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2023.5.19

【ポケモン×工芸展作品解説 3 】 城間栄市〈琉球藍型着物「島ツナギ」〉/福田亨〈雨あがり〉

©2023 Pokémon. ©1995-2023 Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc. 2022年、個人蔵、撮影:斎城卓
 

城間栄市しろまえいいち
〈琉球藍型着物「島ツナギ」〉(部分)

浸染で深い藍 冴える白

月光にでも照らされたのか、闇夜にポケモンたちの姿が浮かび上がりました。藍の濃淡でえた白が美しいですね。後ろでは、アダンの葉が斜めに配されて、南国の風に吹かれているかのよう。パターンの繰り返しによるリズムの効果でしょうか。静けさのなかにもわくわくした気分があります。

タイトルの「藍型」は「えーがた」と読み、紅型びんがたと並んで、沖縄の豊かな染めの世界を築く伝統の技です。紅型同様に型染かたぞめの手法をとりますが、異なるのは浸染しんぜんであるところ。城間家では着物地には口径90センチの大甕おおがめを用い、琉球藍の染液にけてこの深い色を得ているのだとか。染液のなかで防染のりが少しずつゆるむために、紅型と比べて染際そめぎわに柔らかさが見え、おおどかな雰囲気をもたらすのも特徴的です。

今回は、本作と同じ型紙を用いた紅型作品も展示しました。陰陽の対比、また時間の流れを想像するなど、ペアならではの味わいをお楽しみいただければと思います。

(国立工芸館主任研究員 今井陽子)

◇     ◇     ◇

©2023 Pokémon. ©1995-2023 Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc. 2022年、個人蔵、撮影:斎城卓
 

福田亨ふくだとおる
〈雨あがり〉

無彩色 木の色生かす

雨があがったあと、アゲハントが長い口を地面につきさして吸水しています。赤、黄、緑と色彩豊かな羽はとても薄く、曲面をなしています。

この作品の素材はすべて木。一切着彩していない自然の木の色そのままです。目や羽はベースとなる木を彫り、そこに全く同じ形の木をめ込む木象嵌もくぞうがんという技法が使われています。一般的には平面の作品で行われる技法ですが、福田亨は木の塊から彫りだしてある程度厚みを持たせ、嵌めたあとにも彫刻することで表情をつけました。それにより生きものの生命感がぐっと増すのです。

かわいらしいアゲハントに目が留まりますが、その下の地面にもご注目ください。細かい彫り跡で水分を含んだ土の表面が巧みに表現されています。

出品作家のうち、木工は福田だけ。木工の印象が自分の作品で決まるかもしれないというプレッシャーを感じながらも、その幅広さをみせたいと、多彩なアプローチで制作しました。ぜひ会場で木工の魅力を味わってください。

(国立工芸館 横川悠子)

「ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―」(読売新聞北陸支社など主催)は6月11日まで国立工芸館(金沢市)で開催中。問い合わせはハローダイヤル 050・5541・8600。

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