田口義明
〈乾漆蒔絵螺鈿蓋物「遊」〉
大勢いる小さいほうはタッツー、先頭を切る勇ましさを見せているのはシードラ。どちらもドラゴンポケモンに分類され、シードラはタッツーの進化形です。実は向こうにもう1匹、シードラから進化したキングドラもいます。
作者の田口義明は、このポケモンたちを「ポケモン図鑑」で見つけ、独自に想像の羽を広げました。「タッツーには子どものような楽しさを。シードラはキリッとした風貌で意志的に。キングドラは憧れの存在として悠々たる姿で。皆そろって水の流れに乗ったように、器を巡らせたらどうだろう」
蓋にまで続く渦巻く泡のようなきらめきは、漆塗りをした面に青で着彩したアルミ粉を蒔いた上に、さらに細かく粉砕した白蝶貝を蒔いて表しました。細片を置き並べる通常の螺鈿と比べて貝の角度が多様となるせいか、陰影の効果は抜群です。それが磨きあげた漆のやわらかな艶と一体と化して、ポケモンたちのすみかとして与えられた水中世界を豊かに表しました。
◇ ◇ ◇
葉山有樹
〈超古代ポケモン
題材は、ポケモンの世界に伝わる神話です。太古、ホウエン地方(葉山さんが住む九州に似ているらしい)に強大な力を持つ2匹のポケモンが現れました。それは地を
ここに描かれたのは、自然界のエネルギーを象徴するかのようなポケモンたちがそろった緊迫の瞬間。回転体である鉢の形状に、激しくぶつかる3匹のポケモンの気が満ち、勢いは器体の外にまで広がるほど。そのパワーの源には、間違いなく、作者の焼き物にかける思いの強さがあります。
磁器の肌に走る線の緩急・
(国立工芸館主任研究員 今井陽子)
「ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―」(読売新聞北陸支社など主催)は6月11日まで国立工芸館(金沢市)で開催中。問い合わせはハローダイヤル 050・5541・8600。
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