日本美を守り伝える「紡ぐプロジェクト」公式サイト

2025.9.30

沖縄の美 次世代に—高校生「沖縄未来コンサバターズ」

焼き物のシーサー作りに挑戦する参加者たち(那覇市の「育陶園」で)=佐伯文人撮影

高校生が沖縄・首里城の火災で被災した美術工芸品修理の現状や沖縄の伝統文化を学び、次世代に伝えるプログラム「沖縄未来コンサバターズ」(主催・読売新聞社、沖縄ちゅら島財団、協賛・清水建設)が、〔2025年〕8月4~6日の3日間、沖縄県内で行われた。読売新聞社が自治体や企業と協力して伝統文化の振興に取り組むプロジェクト「Action!伝統文化」の一環で、今年で3回目。沖縄県内の高校生と、読売新聞社が運営する子ども記者団「ヨミウリ・ジュニアプレス」の高校生記者計16人が参加した。

首里城被災品の修復知る

1、2日目は、来年秋に完成を予定している首里城正殿の復元工事の状況や、琉球漆器などの美術工芸品の修復について関係者から学び、現場を見学した。首里城を訪れる修学旅行生のガイド活動を行っている興南高・興南アクト部2年の玉寄正奈たまよせせいなさん(16)は、「知らないことばかりだった。これからガイドするときには、今回学んだことを伝えたい」と話す。同部1年の岸本拓士たくとさん(16)も「損なわれた部分からその工芸品がどのように作られたのか分かったこともある、という話が印象に残った。新しい視点を得られた」と学びを深めていた。

2日目には、300年以上の歴史がある「つぼ屋焼」の工房で唐獅子像・シーサー作りを体験した。7代続く窯場「育陶園」で焼き物(やちむん)の歴史について聞いた首里高染織デザイン科2年の島嘉利菜さん(17)は、「やちむんは昔は水がめなどを作っていたけれど、時代に合わせてシーサーを作ったりして、柔軟に(技術や伝統を)残している」と感心した様子。同科3年の榎本和美なごみさん(17)は、「(首里城火災で被災した漆器の修復について)お話を聞いた文化財修復師の土井菜々子先生が、『芸術がさかんなときは人の感性も豊か』とおっしゃっていたけれど、その通りだと思う。大学でも沖縄の染めや織りを学んで、海外にも発信できるものを作ってみたい」と語った。

琉球舞踊や楽器実演 見入る 

最終日には、沖縄の伝統芸能や古武術などが学べる郷土文化コースがある南風原はえばる高で、同高郷土芸能部による琉球舞踊を見学した。参加者は、うたいながらこと三線さんしんを演奏し、優雅な舞踊や勇壮なエイサーを披露する生徒たちの姿に見入っていた。その後は、伝統的な衣装の着付けやそれぞれの楽器の弾き方を教えてもらい、交流を深めた。

南風原高郷土芸能部の生徒から三線を習う参加者たち
参加者に琉球舞踊を披露する南風原高郷土芸能部の生徒たち

三線と胡弓こきゅうを担当した同部2年の又吉心春こはるさん(16)は、「胡弓については沖縄の人からも『あまり知らない』と言われる。まずは沖縄の人から伝えていきたい」と力強く話した。同じく2年の上原歌乃かのさん(16)は、「普段から伝統文化を学んでいるので、ほかの人よりいろいろ知っている自信があったけれど、(今回のプログラムを通じて)まだまだ知らないことがあると感じた」と感想を話した。

2日目の最後に行われた交流会では、伝統文化や技術を継承していくために自分たちに何ができるのかを話し合った。「まず自分たちが学び、知ることが大切」。重要な気付きを得た3日間だった。

(2025年9月7日付 読売新聞朝刊より)

Share

0%

関連記事