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2021.7.9

【京の国宝 知られざる物語 vol.3】藤原道長の日記「御堂関白記」~摂関家、権威の象徴

京都ゆかりの国宝、皇室の至宝の数々を出品する特別展「みやこの国宝―守り伝える日本のたから―」が、7月24日から京都国立博物館で始まります。「明月記」を伝えた冷泉れいぜい家、「御堂みどう関白記」を守った近衛家、そして多くの寺社が、相次ぐ戦火、天災など歴史の波をくぐり抜け貴重な文化財を守り伝えてきました。京都人の歴史を伝える矜持きょうじとその意識を育んだ京都の地を紹介します。

陽明文庫蔵「御堂関白記」 藤原道長の日記

国宝 御堂関白記(自筆本 寛弘元年上巻 陽明文庫蔵)
7/24~8/22展示 8/24~9/12は別の巻を展示

藤原道長(966~1027年)の日記「御堂みどう関白記」を始め、近衛家に伝わる十数万点の古文書や古典籍、古美術工芸品を保管するのが陽明文庫(京都市右京区)だ。近衛家は藤原北家の嫡流で、摂政や関白を務めた五摂家の筆頭。

陽明文庫は1938年、首相だった近衛文麿が設立。仁和寺に隣接する近衛家所有地に高床式鉄筋土蔵造りの文庫2棟を建てた。

近衛家の古典籍、美術品などを収めた陽明文庫(京都市右京区で)

それまで近衛家の資料は数々の危機を乗り越えてきた。名和修・文庫長(83)によると、応仁の乱で近衛邸も焼かれたが、事前に所蔵の品々を寺院などに疎開させていて無事だった。

戦国時代、蔵に盗賊が入り、装束を根こそぎ盗まれたこともあったが、歴史を伝える資料は無事だった。盗賊の目には古ぼけた文書にすぎなかっただろうが、懸命に守ったのは、「歴代が祖先の記録をよりどころに政務を執り、摂関家としての権威と面目を保ったから」と名和さんはいう。

明治維新後、京都にとどまった近衛家も1877年、「御堂関白記」などの重要典籍とともに東京へ移った。残った資料は、97年に京都帝国大学の創設とともに付属図書館に寄託し、貴重な資料は東西に分かれて保存されていた。京都に陽明文庫ができたことで、一括保管と公開が可能になったのだ。

(2021年7月4日読売新聞より掲載)

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特別展「京(みやこ)の国宝―守り伝える日本のたから―」

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