鳥取県中央部に位置する倉吉市。「山陰の小京都」と称される白壁と赤瓦の街並みの一角にある「はこた人形工房」では、山脇和子さん(61)と牧田
倉吉市の工芸品「倉吉
木型に古書の和紙を貼り重ねて乾かす▽型を抜き取り、貝殻を細かく砕いた「
因幡の白ウサギ、だるま、首振り牛、面など約30種類ある。代表的なものが娘の人形「はこた人形」。「はーこさん」と呼ばれ、かつてはおもちゃや無病息災のお守りとして親しまれた。
職人が備後屋6代目の三好明さん(2015年に86歳で死去)だけになっていた2012年、専業主婦だった山脇さんは、市の後継者募集に応募し、病床の三好さんを訪ねるなどして懸命に学んだ。売れるものを作れるまで約2年かかったという。「やめると言ったら、倉吉張子がなくなるんだなというプレッシャーがあった」。20年には銀行員だった牧田さんが加わり、現在は2人で制作する。
寒暖差や微妙な湿度の違いが出来栄えに大きく影響するため、細心の注意を要する。最も緊張するのは人形の「命」である顔を描き込むときだ。「お客さんに『かわいい』と言ってもらうのが励みになる」と牧田さんは話す。
伝統を守りつつ、新しいことにも取り組んでいる。
後継者探しをしなければならないが、現役世代が専業とするには実入りが心もとない。ニカワの仕入れ先が廃業した。課題はたくさんあるが、支援団体「倉吉はこた人形保存会」(13年設立)の会員約90人の存在は心強い。「『細く長く』というのもありだと思う。後世に伝えるという信念を持ち続けていたい」と、牧田さんは言葉に力を込めた。
7月に入り工房では、来年の干支「
(大阪文化部 森田睦)
(2025年7月23日付 読売新聞朝刊より)
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