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2023.1.14

「作品に指、唇が当たる感覚が大切」 — 福岡で「工藝ダイニング」 人間国宝3人がトークショー

トークショーを行う人間国宝の(壇上左から)今泉今右衛門さん、鈴田滋人さん、福島善三さんと進行役の室瀬和美さん(福岡市博多区で)

日本工芸会の正会員らが手がけた器を使って和食を味わい、伝統芸能を鑑賞する体験プログラム「Kōgei Dining(工藝ダイニング)」が2022年11月22日、福岡市の「料亭 嵯峨野」で開かれた。九州在住の人間国宝3人によるトークショーも行われ、作品に向き合う姿勢や考えなどが明かされた。

工藝ダイニングは文化庁や日本芸術文化振興会などが進める文化プログラム「日本博」の一環で、2019年度から開催しており、今回は約30人が参加。トークショーには十四代今泉今右衛門さん(色絵磁器)、鈴田滋人さん(木版摺もくはんずり更紗さらさ)、福島善三さん(小石原こいしわら焼)が参加。「見るだけではなく使って楽しむのが日本工芸」について、旧佐賀藩窯の色絵の技法を受け継ぐ今泉さんは、「機能美以上に作品に指や唇が当たる感覚が大切」とし、「作品にどんな食事を盛るかを考えることは『覚悟』や『対決』と同じこと」と語った。生活雑器を中心に生産される小石原焼で、地元産の材料にこだわる福島さんは「器を(完璧な)100%にせず7、8割で止めて、食べ物を盛って100%になるように作る」と話した。

神経を使って作られる日本工芸について、江戸時代の鍋島更紗を起源とし、木版と型紙を併用する染色技法に取り組む鈴田さんは、「作品を見る時間を人と共有することで共感して誰かに伝えたくなる。このことが心を豊かにしてくれる」と訴えた。

やきものの展示販売で作品を見る来場者たち

このほか筑前琵琶奏者・寺田蝶美さんによる演奏や、十五代酒井田柿右衛門さん、津金日人夢さんら陶芸家6人の作品の展示販売も行われた。

3月には広島で開催

3月4日に広島で「工藝ダイニング」を開催する。

会場は、茶道の流派の一つで、武家茶道「上田うえだ宗箇流そうこりゅう」本部の「上田流和風堂」(広島市西区古江東町)。通常は非公開の施設で、中国・四国地方の工芸作家による茶器を実際に使い、茶会を開く。

上田宗箇流の十六代家元・上田宗冏そうけいさんと、重要無形文化財(蒔絵まきえ)保持者の室瀬和美さんによる対談や、工芸品の展示販売も行う。日本料理「喜多丘」の懐石料理を作家による器で味わう。

参加費は6万6000円(税込み)。問い合わせは読売旅行東日本販売センター(03・5550・0666)。

(2023年1月8日付 読売新聞朝刊より)

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