現代美術家・横尾忠則さんの新作102点を初公開する「横尾忠則 寒山百得」展が〔2023年9月〕12日から東京国立博物館で始まるのに合わせて、同館は特集「東京国立博物館の寒山拾得図―伝説の風狂僧への憧れ―」を開催する。出品作と寒山拾得図の魅力について同館の松嶋雅人研究員に聞いた。
寒山と拾得は中国・唐の時代に霊地である天台山の国清寺に住んでいたとされる伝説上の僧侶。2人は詩をよく作り「寒山子詩集」に2人の作とされる詩が収められている。
ぼさぼさの髪、汚れた衣服、うすら笑いを浮かべ、人目を気にせず、周囲におもねらない自由な振る舞いは、禅宗の悟りの境地を表したものとして絵画の画題となり、中国の知識階級である文人たちにもてはやされた。
日本でも禅宗が広まった鎌倉時代から近代に至るまで、巻ものを開く寒山と箒を持つ拾得など、様々な姿かたちで多くの寒山拾得図が描かれた。明兆、伊藤若冲も作品を残している。
特集では中国・元時代の禅僧、因陀羅が描いた国宝「寒山拾得図」から、幕末、明治の画家、河鍋暁斎の「豊干禅師」まで、中国、日本の画家が描いた作品18点を展示する(会期中展示替えあり)。
「中国の文人も日本の武士階級も世間の規範やしがらみから抜け出し、自由に生きる寒山と拾得の生き方に強く憧れたのだろう」と松嶋研究員。「現代人もさまざまな規範のなかで生きている。令和の時代は個人の多様な生き方をお互いに認め合おうという機運が広がりつつある。寒山と拾得のような自由な生き方が今、再び注目されるのでは」とする。
◇「横尾忠則 寒山百得」展
特集「東京国立博物館の寒山拾得図―伝説の風狂僧への憧れ―」【会期】9月12日(火)~12月3日(日)※特集は11月5日まで
【会場】東京国立博物館(東京・上野公園)
【主催】東京国立博物館、読売新聞社、文化庁
【観覧料】一般1600円、大学生1400円、高校生1000円(前売りは各2000円引き)
※横尾展チケットで特集展もご覧いただけます。
休館日など問い合わせは、ハローダイヤル050・5541・8600へ。
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