手のひらのスマートフォン一つで、何でも体験でき、手に入れることができる。現代の子どもたちは、そう錯覚していないだろうか。本来は、手や体を動かし、五感を総動員してこそ、本当の感動が得られるはず。その本質が詰まった伝統芸能や伝統工芸に、生き生きと取り組む子どもたちの姿を追った。
独特の文化や風習が色濃く残る沖縄では、伝統芸能や技術を継承し、語り伝える高校生が活躍している。
そんな沖縄県内の高校生たちが〔2024年〕7月末の3日間、「沖縄未来コンサバターズ」(主催・読売新聞社、沖縄美ら島財団、協賛・清水建設)に参加した。伝統文化の振興に関わるプロジェクト「Action!伝統文化」の一環。首都圏から訪れた「ヨミウリ・ジュニアプレス」の高校生記者たちと一緒に、首里城火災で被災した美術工芸品修理の現状や技術を学ぶとともに、日頃の活動ぶりを紹介し合う交流をした。
1日目は、興南高で興南アクト部に所属する4人が、守礼門など首里城の見どころを案内した。約15年前に創部された同部は、修学旅行生らに向けて首里城などのガイドを務めている。シーズンの10~11月には月に10回以上も活動するといい、最近は海外から訪れる生徒に英語でガイドすることも。2年の奥間奈月さん(16)は、「部の活動を通して沖縄への愛情が深まった。首里城だけでなく沖縄全部の魅力を伝えたい」と意気込む。
2日目は、伝統的な染め物「紅型」の工房で、「色差し」と「隈取り」という色付けの二つの工程を体験した。首里高染織デザイン科3年の新垣依緒里さん(17)は、琉球王国で発展した格調高い「首里花織」と紅型を卒業制作で制作中といい、「知識だけでなく技術も学び、作品を通して沖縄の伝統工芸を伝えたい」と決意を新たにしていた。
また、音楽や琉球舞踊、古武術などを学ぶ郷土文化コースがある南風原高からは、郷土芸能部員が参加。2年の外間凪琉さん(16)は「海外にも沖縄の文化を伝えていける人になりたい」、同じく仲里愛心さん(16)は「小さい時から趣味で琉球舞踊やエイサーを踊ってきたけれど、高校で学んでもっとその楽しさを知ってほしい、歴史も伝えたいと思うようになった」と話す。
今回は、部員たちが地元の伝統行事「津嘉山の綱曳き」をモチーフにした演目「御願綱」や宮廷舞踊、空手などを披露。参加者は、祈りと気合のこもった演技にじっと見入っていた。
(2024年8月17日付 読売新聞朝刊より)
0%