手のひらのスマートフォン一つで、何でも体験でき、手に入れることができる。現代の子どもたちは、そう錯覚していないだろうか。本来は、手や体を動かし、五感を総動員してこそ、本当の感動が得られるはず。その本質が詰まった伝統芸能や伝統工芸に、生き生きと取り組む子どもたちの姿を追った。
東京・銀座の複合商業施設「GINZA SIX」内の観世能楽堂で〔2024年〕7月15日、「こども能体験講座」と題した普及イベントが開催された。
シテ方観世流の観世三郎太さん(25)が中心となったイベントで、GINZA SIXが5歳から小学生までの70人を保護者と共に招待した。
ロビーでは能面を顔にあてたり、本物の装束を着けたりすることができた。能舞台では囃子の実演が行われたほか、子どもたちが足袋をはいて舞台に上がり、プロの能楽師による謡や能独特の歩き方の指導を受けた。最後に三郎太さんがシテを勤める半能「土蜘蛛」が上演された。
観世流の後継者として将来を嘱望されている三郎太さんは、若手能楽師と共に子ども向けの普及教室に積極的に取り組んできた。
「何度もやるうちに鍛えられてきました。なるべく話を短く、面白くするようにしています。子どもたちが素直な反応を見せてくれるのがうれしい。『一度は能を見たことがある』と言ってくれる人をもっと増やしたい」と語っていた。
観世能楽堂では、8月にも親子向けの能楽鑑賞会や体験教室などが行われた。
(2024年8月17日付 読売新聞朝刊より)
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