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2025.2.4

修理で強化 障壁画を一挙公開 — 東京で大覚寺特別展

真言宗大覚寺派大本山・大覚寺(京都市右京区)に受け継がれる寺宝を紹介する特別展「旧嵯峨御所 大覚寺―百花繚乱りょうらん 御所ゆかりの絵画―」が東京・上野公園の東京国立博物館平成館で開かれている。寺に伝来する華麗な障壁画群240面(全て重要文化財)のうち、前後期合わせて123面が並ぶ空間は圧巻だ。これらは寺が2016年から14年計画で始めた障壁画の保存修理事業で、修理が完了した作品を初公開する場にもなっている。

修理のため解体されるふすま絵

修理に着手する前は、絵の具層の膠着こうちゃく力が経年劣化で低下し、剥離はくり剥落、粉状化、亀裂が著しく、また下地のゆがみもみられたため、長距離の輸送に耐えられる状況ではなかった。今回の特別展で東京に障壁画を輸送し、展示できたことも、修理の成果の一つだ。

修理は本紙(作品そのもの)を下地から取り外し、クリーニングを行い、絵の具層にはにかわ水溶液を塗って浸透させて強化。旧裏打ち紙は全て除去し、新たな肌裏紙で肌裏打ちを行うなど本格解体修理を進め、本紙を安定した状態とする方針で臨んだ。

修理を担当した「修美」(京都市中京区)の宇都宮正紀代表は「損傷部分の調査過程や旧肌裏紙を除去する過程で、障壁画の修理の痕跡が多数確認された。建物の移築に合わせて画面を改変したとみられる痕跡などもあり、どこまで修理するか、評価の見極めが難しい部分があった」と語る。

改変の痕跡も

例えば、移築先の建物の大きさに合わせて作品の寸法を大きくしたとみられる痕跡、すずめや花や葉などを他の部分から切り貼りして構図を変更したとみられる痕跡などだ。過去の改変の痕跡も作品の歴史を物語るものであるため、大覚寺、文化庁と協議の上、旧補修紙は限られた箇所のみを除去したという。

大覚寺では、障壁画の公開は模写とし、実物は収蔵庫で保管してきた。特別展は、現代の最高の技術での修理を終えた実物の障壁画を、一挙に観覧できるまたとない機会だ。宇都宮代表は「お寺から『修理前より明るく見やすくなった』という声を頂いた障壁画群を、ぜひご覧いただきたい」と話している。

宸殿牡丹しんでんぼたんの間のふすま絵。本紙上部や左右には金箔きんぱく押紙が足されている。移築先の建物の大きさに合わせて切り貼りし、本紙を再構成したとみられる=修美提供
宸殿牡丹の間のふすま絵(拡大図)。左の葉は別の場所から切り貼りされた

高円宮妃久子さま 開会式に

特別展「旧嵯峨御所 大覚寺」の開会式が〔2025年〕1月20日、東京国立博物館で行われた。大本山大覚寺はいけばな嵯峨御流発祥の地で、会場には、御所車に竹や松、ボタン、菊などの花を生けた迎え花が飾られた。

大覚寺の山川龍舟門跡が「開創1150年の節目に開かれる展覧会で、嵯峨天皇から継がれてきた平和への願いが広がることを祈念申し上げます」とあいさつ。高円宮妃久子さまがテープカットをされた。

特別展「大覚寺」の開会式で、テープカットをされる高円宮妃久子さま
開会式で挨拶をする山川門跡=青山謙太郎撮影

特別展「旧嵯峨御所 大覚寺―百花繚乱りょうらん 御所ゆかりの絵画―」

【会期】1月21日(火)~3月16日(日)
 ※会期中、一部作品の展示替えを行います。
 前期:1月21日(火)~2月16日(日)
 後期:2月18日(火)~3月16日(日)
【休館日】月曜日、2月25日(火)  ※2月10日、24日は開館
【会場】東京国立博物館 平成館(東京・上野公園)
【観覧料金】一般2100円、大学生1300円、高校生900円、中学生以下無料
【主催】読売新聞社、東京国立博物館、大本山大覚寺、日本テレビ放送網、BS日テレ
【特別協賛】キヤノン、大和証券グループ、T&D保険グループ、明治ホールディングス
【協賛】JR東日本、清水建設、竹中工務店、三井住友銀行、三井不動産、三菱ガス化学、三菱地所、三菱商事
【特別協力】文化庁
【協力】光村印刷
【お問い合わせ】050・5541・8600(ハローダイヤル)
【公式サイト】https://tsumugu.yomiuri.co.jp/daikakuji2025/

(2025年2月2日付 読売新聞朝刊より)

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