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2026.10.7

【第20回「読売あをによし賞」】〈継承・発展〉生活の中に截金の魅力を - 江里朋子さん(福岡市西区)

茶道具に截金を施す江里朋子さん(京都市左京区で)

文化遺産や伝統文化の保存、継承に尽力している個人・団体を顕彰する「第20回読売あをによし賞」の受賞者が決まった。「保存・修復」部門には、沖縄・首里城(那覇市)の再建に用いる沖縄産ベンガラの復元に取り組んでいる一般財団法人「沖縄美(ちゅ)ら島財団総合研究所」(同市)、「継承・発展」部門には、工芸品や仏像に文様を施す「截金(きりかね)」の技法を発展させている江里朋子さん(54)(福岡市西区)が選ばれた。賞金は各200万円。表彰式は〔2026年〕11月3日に大阪市内で開かれる。(土谷武嗣、岡田英也)

【 継承・発展 】

截金作家
江里朋子さん 54(福岡市西区)

金箔(きんぱく)やプラチナ箔を細く切り、筆にしみ込ませた接着剤で貼って文様を表現する「截金」の技術を発展させている。「思いがけない受賞で、截金に光を当てていただいた」と喜ぶ。

仏師の父・康慧(こうけい)さん(83)と、截金の人間国宝に認定された母・佐代子さん(2007年死去)の長女として生まれた。京都芸術短大(現・京都芸術大)で日本画を専攻し、卒業後、佐代子さんから本格的に截金を学んだ。

截金の技術は飛鳥時代に仏教とともに伝わり、仏像に施された。佐代子さんは截金を多くの人に知ってもらおうと、茶道具や漆器といった身近な工芸品に応用し、独自の作品を残した。

「子どもの頃は母の緻密(ちみつ)な仕事を見て、私にはできないと感じたが、やっていくうちにのめり込んだ」と振り返る。結婚を機に拠点を移した福岡市と、両親のいる京都市を行き来し、技術を磨いてきた。2011年、日本伝統工芸展に初出展した「飾筥(かざりはこ)」で日本工芸会新人賞に選ばれて以来、多数の受賞歴を誇る。

截金で装飾された茶道具や飾筥

截金制作は主に▽4~6枚の箔を焼き合わせる▽竹の小刀で髪の毛ほどの細さに切る▽接着剤や水を含ませた筆で仏像や工芸品に貼る――の工程に分かれる。中でも、佐代子さんが考案した技法「截金透塗(すかしぬり)」を得意とする。時間の経過とともに徐々に透明度が高まる漆を金箔に上塗りすることで、重厚感が増し、剥落(はくらく)防止にもなる。

十数年前からはインテリアとして、ヒノキやキリ、絹地などに彩色と截金を施してパネルのように飾る作品にも取り組む。「生活の中で截金の魅力を感じてもらえたらうれしい」と話し、「伝統的な技法を大切にしつつ、令和時代の截金を模索していきたい」と気持ちを新たにしている。

■ 選考委員講評

池坊専好・華道家元池坊次期家元 「両部門ともに新規応募が多かった。まだまだすばらしい世界があり、他薦で活動を世に出したいという機運が高まってきている」
園田直子・国立民族学博物館名誉教授 「ここから1人選ばなければならないのかと、いつもながら感じる。表彰されなかった方もすばらしいものがある」
中西進・国際日本文化研究センター名誉教授 「改めて日本人は緻密で伝統を受け継ぐしたたかさがある民族だと感じた。非常に良い道を日本人は歩いてきている」
三輪嘉六・NPO法人文化財保存支援機構理事長 「保存・修復部門は、まさに時宜を得た受賞。沖縄文化に満ちた復元研究を顕彰できてよかった」
室瀬和美・重要無形文化財(蒔絵(まきえ))保持者 「天然のベンガラが沖縄で見つかったことがすごい。完全な復元に向けて研究を継続してもらうためにも重要な受賞だ」
湯山賢一・東大寺ミュージアム館長 「継承・発展部門の受賞者は、親子による技術継承というだけでなく、工芸作品としても高い評価を受けている点がすばらしい」
正岡明・読売新聞大阪本社執行役員編集局長 「賞も20回目。これからも伝統文化を下支えする『縁の下の力持ち』に光を当て、次世代につなぐ活動を支援し続けたい」

◆賞創設20年記念トークイベント【申し込みは締め切りました】
読売あをによし賞の創設20年記念トークイベント「未来へつなぐ文化財 保存と継承」が11月3日午後2時から、大阪市北区のリーガロイヤルホテル大阪で開かれる。第20回の表彰式の後、運営・選考委員の三輪嘉六さんと室瀬和美さん、学芸プロデューサーの橋本麻里さんが文化財を未来へ伝える意義を語り合う。

無料で定員150人(同伴者1人まで可。応募者多数の場合抽選)。申し込みは10月6日まで(読売IDが必要)。問い合わせは事務局(06・6366・1857=平日午前10時~午後5時)。

【主催】読売新聞社
【特別協力】一般社団法人文化財保存修復学会
【後援】文化庁、大阪府教育委員会、独立行政法人国立文化財機構、公益財団法人文化財保護・芸術研究助成財団、読売テレビ

(2026年10月5日付 読売新聞朝刊より)

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