
文化遺産や伝統文化の保存、継承に尽力している個人・団体を顕彰する「第20回読売あをによし賞」の受賞者が決まった。「保存・修復」部門には、沖縄・首里城(那覇市)の再建に用いる沖縄産ベンガラの復元に取り組んでいる一般財団法人「沖縄
美 ら島財団総合研究所」(同市)、「継承・発展」部門には、工芸品や仏像に文様を施す「截金 」の技法を発展させている江里朋子さん(54)(福岡市西区)が選ばれた。賞金は各200万円。表彰式は〔2026年〕11月3日に大阪市内で開かれる。(土谷武嗣、岡田英也)
沖縄産ベンガラの復元に取り組む
沖縄美ら島財団総合研究所(那覇市)
沖縄の象徴・首里城(那覇市)で琉球王国時代に使われた赤色顔料「ベンガラ」を、約20年かけてよみがえらせた。2019年に火災で焼失し、間もなく完成する「令和の正殿」に使われている。沖縄美ら島財団総合研究所の幸喜淳・琉球文化財研究室長(52)は「再建のタイミングでの受賞は、復元に協力してくれた多くの人たちへの恩返しになり、とてもうれしい」と語る。
正殿は漆が塗り重ねられ、華やかな赤色が美しく、「巨大な漆器」とも形容される。王家の古文書には「
首里城を管理する財団は、2006年からベンガラの研究を進めてきた。約10年、沖縄本島北部で原材料を探し回ったが見つからず、行き詰まっていた頃、本島北部に住む中学生から寄せられた「なぜ地元の川は赤いのか」という質問が、復元への扉を開いた。

現地を訪れ、赤褐色に染まった川を確認。鉄バクテリア由来の水酸化鉄と気づき、「『当たりだ』と確信した」。一帯はかつて、「カイミジ」と呼ばれる赤い川が多数存在していた地域だった。実用化に向け岡山大と共同で研究に取り組み、乾燥させた水酸化鉄を焼成して漆や
11月23日から一般公開される正殿を前に、「今自分たちが考えるベストな色ができた」と目を細める。一方、火災で被害を受けた漆器など、300点以上の美術品の修理は続く。「まだまだ長い道のりだが、琉球美術の技術継承や人材育成に取り組む」と前を向く。
■ 選考委員講評
池坊専好・華道家元池坊次期家元 「両部門ともに新規応募が多かった。まだまだすばらしい世界があり、他薦で活動を世に出したいという機運が高まってきている」
園田直子・国立民族学博物館名誉教授 「ここから1人選ばなければならないのかと、いつもながら感じる。表彰されなかった方もすばらしいものがある」
中西進・国際日本文化研究センター名誉教授 「改めて日本人は緻密で伝統を受け継ぐしたたかさがある民族だと感じた。非常に良い道を日本人は歩いてきている」
三輪嘉六・NPO法人文化財保存支援機構理事長 「保存・修復部門は、まさに時宜を得た受賞。沖縄文化に満ちた復元研究を顕彰できてよかった」
室瀬和美・重要無形文化財(蒔絵 )保持者 「天然のベンガラが沖縄で見つかったことがすごい。完全な復元に向けて研究を継続してもらうためにも重要な受賞だ」
湯山賢一・東大寺ミュージアム館長 「継承・発展部門の受賞者は、親子による技術継承というだけでなく、工芸作品としても高い評価を受けている点がすばらしい」
正岡明・読売新聞大阪本社執行役員編集局長 「賞も20回目。これからも伝統文化を下支えする『縁の下の力持ち』に光を当て、次世代につなぐ活動を支援し続けたい」
◆賞創設20年記念トークイベント【申し込みは締め切りました】
読売あをによし賞の創設20年記念トークイベント「未来へつなぐ文化財 保存と継承」が11月3日午後2時から、大阪市北区のリーガロイヤルホテル大阪で開かれる。第20回の表彰式の後、運営・選考委員の三輪嘉六さんと室瀬和美さん、学芸プロデューサーの橋本麻里さんが文化財を未来へ伝える意義を語り合う。
無料で定員150人(同伴者1人まで可。応募者多数の場合抽選)。申し込みは10月6日まで(読売IDが必要)。問い合わせは事務局(06・6366・1857=平日午前10時~午後5時)。
【主催】読売新聞社
【特別協力】一般社団法人文化財保存修復学会
【後援】文化庁、大阪府教育委員会、独立行政法人国立文化財機構、公益財団法人文化財保護・芸術研究助成財団、読売テレビ
(2026年10月5日付 読売新聞朝刊より)
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