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2025.12.22

文楽に浸る 名湯の宿 - 伊豆・三養荘で「壺坂観音霊験記」

文楽の特別公演が行われる旅館「伊豆長岡温泉 三養荘」

文楽と名湯、懐石料理を楽しめる特別公演「春爛漫らんまんプレミアム文楽~祈りと愛が紡ぐ歴史浪漫の旅~」が2026年3月1~2日、静岡県伊豆の国市の旅館「伊豆長岡温泉 三養荘」で開かれる。3回目の開催となる今回は、互いに思いやる夫婦の愛を描いた「壺坂観音霊験記つぼさかかんのんれいげんき 沢市内さわいちうちより山の段」を上演する。プロデュースを手がける人形遣いの吉田勘弥さんに聞いた。

「三養荘では、宿も食事も温泉も、いろいろな楽しみがあります」と語る勘弥さん=園田寛志郎撮影
人形遣い 吉田勘弥さん 「飽きない芝居 楽しんで」

盲目の沢市は、明け方に家を空ける妻お里の浮気を疑うが、実はお里は沢市の目の病が治るように壺坂寺の観世音へ祈願に出かけていた。誤解は解けたが、お里を思うあまり、沢市は崖から身を投げた。するとお里も後を追う。そこに観世音が現れ、2人は息を吹き返し、沢市は目が見えるようになる。

沢市が三味線を弾き、お里が針仕事をする家の場面から始まり、沢市が自害するとお里は嘆き悲しむ。最後には観世音の慈悲を受けた2人が喜び合う。「場面転換がはっきりしていて、見ていて飽きない。文楽はハッピーエンドの芝居はほとんどないが、壺坂は楽しんで見ていただける」と穏やかに語る。

お里を遣う勘弥さんは、「沢市のことが心配になってだんだんと緊迫感が増し、崖下へ飛び降りた沢市を見て嘆く気迫を表現したい」と力を込める。

人間国宝で截金きりかね作家の江里佐代子さんの作品「峰光」を背景に上演される。「限られた空間の中で、細かな動きをする人形を間近で見ていただけたら」と呼びかけた。

2024年に三養荘で上演された「ひらかな盛衰記」
江里佐代子さんの作品「峰光」の前で文楽が上演される=いずれも西武・プリンスホテルズワールドワイド提供

読売新聞社と西武ホールディングスが連携して進める「Action!伝統文化」の一環。豊竹呂勢太夫さん、鶴沢燕三さん、吉田玉佳さんらも出演する。義太夫や人形遣いの体験もできる。

予約・問い合わせは三養荘((電)055・947・1111)へ。

(2025年12月7日付 読売新聞朝刊より)

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