8月23日に処暑を迎え、秋の気配も少しずつ感じるこの頃。穀物も実り始めるこの季節には、食卓にも新しい器を取りそろえたくなります。
漆器は朱や黒、緑などといった鮮やかな色、
見た目が華やかなだけでなく、実用性に優れているのも魅力。漆器は熱に強く、熱い料理を盛っても、手のひらにその熱を通しません。
さて、いざ買うとなると、どれを選べば良いか迷い、結局何も買わずに帰ることもしばしば……そんな人も多いのではないでしょうか? 享保元年(1716年)、奈良で創業し、日本全国の工芸技術をいかしたものづくりに取り組む中川政七商店では、「産地のうつわはじめ」と題し、日本各地の器の産地から「豆皿」を取りそろえるシリーズをつくりました。産地の魅力をぎゅっと凝縮した「豆皿」を通してその違いを知り、選び比べることで、日本の器を知る入り口となることを願っています。
今回は石川県の「山中漆器」、福井県「越前漆器」、岐阜県「飛騨春慶塗」から。大きさはいずれも直径約10センチです。
石川県加賀市に伝わる山中漆器は「木地」に大きな特徴があります。熟練の職人がろくろを使って削り出した木地は、狂いのない整った形と木目の美しさが特徴。木目と模様が美しく際立つ豆皿に、透けた漆を擦り込んでいく拭き漆で仕上げています。
1500年もの歴史を誇る越前漆器は、堅牢なつくりと深い色合いが昔から人々に愛されてきました。1793年創業の「漆琳堂」でつくった豆皿は、一連なりで途切れない刷毛(筆)の跡を残す「刷毛目」という伝統技法で仕上げました。
岐阜県に伝わる飛騨春慶塗は約400年前、江戸時代初期に献上品として生まれ、主に茶器として用いられた歴史があります。江戸時代中期からは、重箱や盆といった生活用品も多く作られ、庶民にも親しまれるようになりました。シンプルにデザインした豆皿は、透漆によって仕上げられた表面がつやつやと上品に輝き、奥ゆきのある色味から天然の美しい木目が見えるのが特徴です。
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