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2020.1.17

黒柳徹子さんが広報大使に 文化芸術の祭典「日本博」とは?

「日本博広報大使」に任命された女優の黒柳徹子さん(中央)。右は萩生田文部科学相、左は河村潤子・日本博事務局事務総長(15日午後、東京都港区の虎ノ門ヒルズで)=菅野靖撮影

文化庁は15日、政府が東京五輪・パラリンピックに合わせて開催する、文化芸術の祭典「日本博」の主要プログラムを発表した。「日本人と自然」を総合テーマに、美術展や舞台公演など約370件(15日現在)を全国で展開する計画だ。

東京・虎ノ門で開かれたこの日の記者会見では、祭典を周知するため、女優の黒柳徹子さん(86)が「日本博広報大使」に任命された。黒柳さんは「日本は大変、古い文化を持った国。若い方たちにも、外国の方たちにも分かってもらえるように頑張ります」と話した。

「日本博」は3月14日、東京国立博物館(東京・上野)で、歌舞伎や能、文楽、雅楽など伝統芸能が一堂に会したオープニングセレモニーを開く。その後、「美術・文化財」「被災地復興」など8分野で企画を行う。

「日本博」は「日本の美」を国内外に発信し、外国人観光客にも日本文化を体感してもらうことが狙いだ。主要プログラムには、文化庁、宮内庁、読売新聞社が官民連携で推進する「紡ぐプロジェクト」の展覧会も採択されている。

黒柳さん ニューヨークで感じた着物の「力」

黒柳さんは広報大使の任命式の後、萩生田文部科学相らと日本文化の魅力について語り合った。

黒柳さんがまず、日本文化を象徴するものとして挙げたのが「着物」だ。かつて、米ニューヨークの「イースターパレード」に振り袖姿で参加した際、黒柳さんを撮影した写真が地元新聞に掲載され、注目を集めたという。喜劇王チャーリー・チャップリン(1889~1977年)とも面会し、チャップリンは黒柳さんの手を握りながら「ジャパン」と声を上げた。「日本の皆さんを愛している」と伝えられて感激した、との思い出話を披露した。

「ほかにも『歌舞伎』とか『寿司すし』とかおっしゃってね」と、チャップリンが日本文化に示した関心を懐かしそうに振り返った。「着物を着ていなかったらチャップリンにお会いすることもなかったと思う。着物の威力はすごいと実感した」と話した。

その上で、黒柳さんは「若い時は日本の素晴らしさを当たり前のことのように思い、(魅力に)気づかないこともたくさんあると思う」。広報大使就任を「光栄」と喜び、「(若い人にも)日本には優れているものがたくさんあると自信を持ってほしいし、外国の方にも知ってもらいたい。出来ることがあったら一生懸命やりたい」と述べた。

萩生田文科相も「日本博が、日本文化を分かりやすく伝え、国内・海外を含めた多くの人々に感動を与えて、歴史に残るものになれば」と期待を語った。

河村潤子事務総長 「 人の交流、感動の共有に期待」

日本博事務局事務総長を務める河村潤子・日本芸術文化振興会理事長に「日本博」の意義や魅力などを聞いた。(文化部 井上晋治)

「日本博」の総合テーマは「日本人と自然」です。日本には素晴らしい四季があり、絵画や芸能など様々な芸術で春夏秋冬が表現されてきました。

例えば、昨年12月に国立劇場で演じられた「蝙蝠こうもりの安さん」は、喜劇王チャップリンの映画「街の灯」を歌舞伎化した演目です。盲目の花売り娘が、安さんのおかげで目を治療して見えるようになるのですが、娘が季節の流れを感じる場面は、色付いた紅葉で表現されていました。

また、能楽では、植物や虫などに仏性を見いだします。自然と対話し、感情を共有する長い伝統が、日本文化にはあるのです。舞台装置や美術、建物には紙や木、布などの自然の材料も使われている。歌舞伎の「平家へいけ女護島にょごのしま」を見た時、孤島に流罪となった俊寛僧都が暮らす海辺の小屋の屋根に、本物の昆布が用いられていて驚いたことがあります。

「日本博」の様々な企画内容は、縄文から現代までの長い時間軸で考えています。全国各地で開催することで、これまで知らなかった文化施設を訪れる機会も増えるでしょう。人の交流が進んだり、外国人と感動を共有したりすることにも期待しています。そして、初めて伝統芸能に触れる外国人に親しんでもらうため、女形の演技実演やよろいの着用など、敷居を低くする体験型文化プログラムも重視しています。

ジャンルを超えた共同制作も特徴の一つ。昨秋の「第25回国際博物館会議(ICOM)京都大会」の開幕で披露された能舞台「石橋しゃっきょう 大獅子」では、京都国立博物館所蔵の18世紀の「小鼓胴」が演奏に使われました。3月に東京国立博物館で始まる「体感!日本の伝統芸能」展では、同館所蔵の狩野長信筆「花下かか遊楽図ゆうらくず屏風びょうぶ」(国宝)を高精細映像のプロジェクションマッピングで披露します。

私が子供の頃は、お盆やお正月に母の実家がある京都府綾部市に帰省し、山や川でよく遊んだものです。アユやセミ、きのこ、草花を主人公にした童話を書いたこともあり、能楽や歌舞伎で動植物が擬人化される文化・芸術は、親しみやすい世界でした。お正月には実家に獅子舞が来て頭をかんでもらい、人々が無形の伝統芸能でつながっているとも感じました。

現代は効率や便利さを追求しがちですが、伝統文化は時間と手間をかけないと価値が伝わりません。「日本博」を通じ、誰かと感動を共有してもらえたらうれしいと思います。(談)

【プロフィル】かわむら・じゅんこ 京都府生まれ。文部科学省生涯学習政策局長、内閣官房内閣審議官などを経て、2018年4月から独立行政法人日本芸術文化振興会理事長。19年4月から日本博事務局事務総長。

■日本芸術文化振興会 国立劇場や国立能楽堂など全国の国の劇場・施設で伝統芸能など舞台芸術公演を行う。1990年には芸術文化振興基金を創設。昨年4月から日本博事務局も担う。

3月から本格スタート

「日本博」の基本理念は、「日本の美」を国内外に発信し、次世代に伝え、未来の創生につなげること。大自然の多様性を尊重し、あらゆるものに命が宿ると畏敬してきた日本人の心が、芸術や生活などで様々に表現されてきた歴史を紹介する。

主な企画は「美術・文化財」「舞台芸術」「生活文化・文芸・音楽」など8分野。15日現在、約370件が採択・認証された。

「日本博」は、安倍首相直轄で2015年に発足した「『日本の美』総合プロジェクト懇談会」で提唱された。海外発信も重視し、仏米では芸術祭典が開かれた。18年には「日本博総合推進会議」が作られた。「日本博」は19年3月、旗揚げ式が行われ、参画が認証される形で「紡ぐプロジェクト」の二つの特別展も既に開催。今年3月の開幕式典から本格始動となる。

(2020年1月16日読売新聞朝刊より掲載)

公式サイトはこちら

人気ゲームが原作の2.5次元ミュージカル「刀剣乱舞とうけんらんぶ」から刀剣男子「髭切」「膝丸」も登場! オープニングセレモニーの概要も紹介されています。

https://www.ntj.jac.go.jp/nihonhaku/project/project_75.html

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