政府が推進する「日本博」の一環として、9月21日に東京・上野の東京国立博物館で開幕する特別展「工藝2020―自然と美のかたち」。出品する名匠の技と美を紹介するシリーズの第4弾は、陶芸家・ 森野
森野さんが出品する
米国の大学で陶芸を指導した時に気付いたのが、日本人の自然観と伝統の豊かさだった。日本では、変化する土の状態に応じて「待つ」ことも求められるのに対し、米国で出会った作品は、自由な発想にあふれ「感性で土をねじ伏せている」ように見えた。
「土の声を聞き、時間をかけて自分に引き寄せる。自然を征服するのではなく、親しみや恐れを抱いて寄り添ってきた。素材との付き合い方も同じ」と考える。
「松籟」は、ろくろや型を使わない「手びねり」で成形し、簡潔でぬくもりのあるフォルムに仕上げた。現代的でありながら、京都らしい美意識を感じさせる。心がけたのは「素材、色彩、模様の一体感」だ。
「世界が瞬時につながる時代だからこそ、伝統と地域に根ざした要素は大事。脈々と続く工芸の『遺伝子』が、世界の人々を魅了するのではないか」
2020年9月6日付読売新聞より掲載
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