政府が推進する「日本博」の一環として、9月21日に東京・上野の東京国立博物館で開幕する特別展「工藝2020―自然と美のかたち」。出品する名匠の技と美を紹介するシリーズの第3弾は、染織家・土屋
土屋さんは、部分的に透き目ができる織物技法「
「紋紗は宮廷装束に使われ、絣は庶民のものだったが、この二つが、自分の中では自然と重なった」。本展に出品する「竹風漏月」は、竹林に降り注ぐ月の光が表現され、薄緑のグラデーションが清新な作品だ。
絹糸を染める植物採集も自分で行う。色が出た時が一番うれしいといい、「何度やっても感動する」。思わぬ色が出ることもあるが、「植物から『いただく』もの。それはそれとして受け入れる」という。
織りに入ると、精神統一をしながら、乱れなく織っていく。心が乱れたままだと、織りにも出てしまうのだ。
1981年、地元の岐阜県関市に工房を構えた。近くを流れる清流・長良川など、幼いころから親しんできた自然から受けるインスピレーションが作品の源にある。「アイデアに困ったことはない。あれもこれも、やりたいことばかり」と笑った。
2020年9月6日付読売新聞から掲載
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