京都ゆかりの国宝や皇室の名品を集めた特別展「
同館長を16年間務め、3月末で退任した佐々木丞平・京都大名誉教授に、文化財を守り継ぐ意義と歴史都市・京都が果たしてきた役割を聞いた。
「京の国宝」展は、ただ名品を並べるのではなく、京都を中心に展開される文化財の歴史に焦点を絞って構成したのが特徴です。
1200年都があった歴史から、国宝などの優れた作品は京都で作られたものが多い。現在、全国で1万件を超える国宝・重要文化財指定の美術工芸品のうち、6分の1以上は京都にあります。
必然的に、文化財を作る技術やノウハウ、材料などが集積し、京都は日本における文化財の本拠地のような機能をもつようになりました。文化財を守り伝えるために欠かせない修理も、京都を中心に発展してきました。特別展ではこうした歩みと作品を関連づけて紹介します。
皇室と文化財とのかかわりについてもスポットを当てます。明治維新後、危機に
文化財行政に長くかかわった経験から「なぜ文化財を保護しなければならないのか」と聞かれることがあります。たとえば、和歌は日本を代表する文化ですが、仮に万葉集や古今和歌集などがなかったら、日本に和歌の伝統はあったでしょうか。文化財を守らなければ、日本の文化そのものが守れないのです。
そのために欠かせないのは公開することです。展覧会などで公開すると作品が傷むので、保存と公開は相反するという意見もあります。しかし、公開しなければ誰も意識を向けてくれません。無関心は文化財保護の大敵です。
私は、文化は大きな木のようなものだと思っています。伝統文化という幹や根っこの部分がしっかりしていないと、新しい文化や芸術といった葉っぱも芽吹いてこないでしょう。
日本文化を支えている幹に目を向け、適切な支援をしていくことが大切。今回の特別展がそのことを考えるきっかけになればと思います。
(2021年4月4日読売新聞より掲載)
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