政府が推進する「日本博」の一環として、9月21日に東京・上野の東京国立博物館で開幕する特別展「工藝2020―自然と美のかたち」。日本の工芸作品が世界で高い評価を得る理由について、海外の研究者に聞いた。
桃山、江戸時代の陶磁器を研究するため、大学時代に日本にきた。佐賀で多くの作品に触れ、現代の工芸に夢中になった。
日本の工芸の特徴は、「余白」があること。酒井田柿右衛門(十四代)に「模様から見ないで、白いところから見てください」と教わった。様式を大事にしつつ、そのなかに自由がある。そのバランスが面白い。見えない裏側まで丁寧に仕上げる細やかさも、日本らしい。
日本の工芸には、心に直接入ってくるような力がある。まるで生きているようだ。作家が時間をかけ、気持ちをこめて作っているからだろう。私は毎日、同じ漆の器を使っているが、この器があるから朝が楽しくなる。工芸は生活空間を変えてくれるアートなのだ。
海外でも日本の工芸は人気が高い。課題は入手が難しいこと。ロンドンのジャパン・ハウスも周知に努めているが、もっと入手しやすい仕組みをつくるなど、工夫が必要だろう。大切な技術を継承していくには、マーケットを作ることが大事だ。
私が携わった大英博物館の三菱商事日本ギャラリーでは、エントランス部分に現代の作品を展示している。浮世絵ももちろん良いが、現代の作品に力を入れるべきだ。小さな展示会を何回も開催し、作家の実演などを通して魅力を発信する。日本に注目が集まっている今がチャンスだ。(談)
世界有数の美術品収集で知られる「英国ロイヤル・コレクション」には、日本の工芸品が多数、含まれている。17世紀、東インド会社の貿易船が持ち帰った武士の
以来、英王室と日本の皇室の交流は300年以上にわたる。1953年の女王エリザベス2世の
2020年9月6日付読売新聞より掲載
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