皇居三の丸尚蔵館(東京都千代田区)収蔵の名品や県ゆかりの美術工芸品を紹介する展覧会「皇室の名宝と新潟 ―皇居三の丸尚蔵館収蔵品でたどる日本の技と美」が長岡市の県立近代美術館で開かれている。見どころの作品を3回にわたり紹介する。
19世紀末から20世紀初めにかけて、明治天皇の下命のもと、一流の美術家たちの技術を結集して、明治の「三大作」と呼ばれる優れた工芸品が制作された。
本作は、そのうちの一つで、明治天皇の手許品として作られた。正倉院宝物の刀剣などの古い刀装様式を参考にデザインされ、材料には、昨年〔2024年〕、世界遺産に登録された佐渡金山から産出した純金や甲州産の水晶などが用いられた。後に帝室技芸員になる香川勝廣を中心に制作が進められ、計画から完成まで、実に10年の歳月がかかった。
こうした事業は、当時の技術の粋を集めた工芸品を生み出したのみならず、美術家たちを保護し、その技術を次世代へと伝える役割も果たした。(県立近代美術館主任学芸員 飯島沙耶子)
〔2025年〕3月16日まで。県立近代美術館(0258・28・4111)。
(2025年2月12日付 読売新聞朝刊より)
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