岐阜出身の洋画家、山本芳翠(1850~1906年)の足跡を皇居三の丸尚蔵館(東京都千代田区)の収蔵品などでたどる展覧会「PARALLEL MODE:山本芳翠―多彩なるヴィジュアル・イメージ―」が岐阜県美術館で〔2024年〕12月8日まで開かれている。見どころの作品を3回にわたり紹介する。
フランスから帰国した山本芳翠は、1895年(明治28年)の明治美術会第7回展に「浦島」を出品した。
欧化政策の反動から、日本画家たちがこぞって歴史画や説話を題材とした作品に取り組んでいた頃、山本は洋画でも描けるとばかりに、御伽草子で広く知られる「浦島太郎」の一場面を、大画面に本格的な西洋額縁をつけて発表した。
西洋画に通じる海上パレードとして、華やかにアレンジした群像表現だ。暗雲立ち込めるなか、後ろを振り返る太郎の手には、玉手箱が描かれている。日本人になじみ深い主題ゆえに、一目で絵の物語性へと引き込まれる作品だ。
本展では、この作品を描くきっかけとなった山本の「十二支」も特別公開している。三菱財閥の創業家、岩崎家からの依頼で描かれたものだ。 (県美術館学芸員 廣江泰孝)
岐阜県美術館(☎ 058・271・1313)
(2024年12月1日付 読売新聞朝刊より)
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