ここに紹介する大きな
棚板の表から裏へ、
このデザインは東京美術学校(現在の東京芸術大学)に委嘱され、賞をかけて募った結果、漆工科の学生で当時、弱冠25歳であった
一朝はその門下を率いて皇居内に設けられた製作場に通い、図案調整者として紫水もまた月に1度はこの現場を訪れた。
ここに使用した蒔絵粉は佐渡の御料鉱山から取り寄せた金塊から製造し、螺鈿には沖縄の夜光貝が用いられた。製作に関する書類や製作場の日録、図様の転写に実際に用いた下図が宮内庁に保管されており、使用した金はおよそ4キロ・グラム、螺鈿の総数は2905個と記録されている。
唯一無二のこの棚は、工芸技術の粋を尽くして明治美術の真髄を作品に示し、永く後世に伝えることを目的に製作された。当時の優れた美術家たちが関わり、宮内省(当時)が直々に進めたこの御物の製作事業は、皇室による美術の保護と奨励を広く世に示すこととなった。明治という時代の記念碑的な品である。
(宮内庁三の丸尚蔵館学芸室主任研究官 五味聖)
◆特別展 日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱
【会期】9月25日(日)まで
【会場】東京芸術大学大学美術館(東京・上野公園)
【主催】東京芸術大学、宮内庁、読売新聞社
【特別協力】文化庁、紡ぐプロジェクト
【問い合わせ】050・5541・8600(ハローダイヤル)
【公式サイト】https://tsumugu.yomiuri.co.jp/tamatebako2022/
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