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「浜松図屏風」 海北友松筆 1605年(慶長10年) 4月9日~5月12日展示

2024.4.15

【皇室の美】海北友松「浜松図屏風」 - 金地に濃彩 優美な情趣

開館記念展「皇室のみやび―受け継ぐ美―」第3期「近世の御所を飾った品々」

やわらかな曲線をえがく州浜に、ゆったりと波打つ海、ゆたかにしげる松林と群れ飛ぶ千鳥を屏風びょうぶに描いた美しい作品です。

画面を大きく占める州浜の金、現在は黒ずんでいますが、制作当初は銀色に輝いていた波、松の緑が織りなすシンプルで明快な画面構成と色彩は、目にも鮮やかな印象を与えます。本図に描かれた海辺の光景は古くより和歌に詠まれ、また絵画や工芸の意匠としても、日本人に好まれてきました。

「浜松図屏風」は旧桂宮家に伝来した作品です。桂宮家は八条宮智仁としひと親王(1579~1629年)を祖とする八条宮家を前身としています。歴代当主は文芸に造詣が深く、なかでも智仁親王は和歌や書など諸芸に秀で、別荘の桂離宮(京都市西京区)を造営するなど、学問や芸術に優れた才を見せた人物として知られています。

本図に作者を示す署名や印章はありませんが、古くから桃山画壇の絵師で、狩野永徳や長谷川等伯らとならぶ海北友松かいほうゆうしょう(1533~1615年)の作と伝えられてきました。岩の描写には、確かに友松の特徴を見出みいだすことができます。

智仁親王の日記には、友松が絵画制作のため、1602年(慶長7年)からたびたび親王のもとを訪れていたことも記されています。さらに近年行われた修理で、1605年(慶長10年)にこの屏風を作った旨の墨書も確認されました。

これらから、本図は智仁親王の注文により、73歳の友松が筆をふるった作品とすることができます。

友松は豪快な筆致による水墨画を主にした中国画題の作品を多く残しており、本図のような金地に濃彩で描いたやまと絵画題の作例はきわめて珍しいといえます。優美で情趣あふれる表現には、親王の好みが反映されているのでしょう。当時の宮廷文化の華やかさを今に伝える一点です。

(皇居三の丸尚蔵館 展示・普及課長 戸田浩之)

開館記念展「皇室のみやび―受け継ぐ美―」
第3期「近世の御所を飾った品々」

【会期】〔2024年〕5月12日(日)まで。
 月曜休館。4月29日、5月6日は開館し、翌火曜日休館。
 会期中一部展示替えあり。
【会場】皇居三の丸尚蔵館(皇居東御苑内)
【問い合わせ】050・5541・8600(ハローダイヤル)

(2024年4月7日付 読売新聞朝刊より)

展覧会について詳しくはこちら→
https://shozokan.nich.go.jp/exhibitions/miyabi.html

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