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2024.2.7

【皇室の美】横山大観「日出処日本」― 朝陽に輝く富士の威容

開館記念展「皇室のみやび―受け継ぐ美―」第2期「近代皇室を彩る技と美」

「日出処日本」 横山大観 1940年(昭和15年)皇居三の丸尚蔵館収蔵 ※通期展示

1940年は、初代神武天皇の即位から2600年にあたるとされ、国内は祝賀ムードに沸き立っていた。戦時中にもかかわらず、各地で記念の音楽祭や運動会が華やかに催され、皇室ゆかりの名所旧跡をめぐる観光も空前の活況を呈している。美術界もその例外ではなく、各種の記念展覧会が開催されたが、なかでも「紀元二千六百年奉祝美術展覧会」は国内の有力な美術家たちが勢ぞろいした一大イベントであった。

日本画壇の巨匠・横山大観(1868~1958年)は、この展覧会に縦2.3メートル、横幅は4メートルを超える巨大な作品を出品し、会場内で圧倒的な存在感を示すことになった。

日出処日本ひいづるところにほん」は朝陽あさひに輝く霊峰富士の堂々たる威容を描いたものだ。富士をこよなく愛した大観は、生涯に2000点近い富士の絵を描いたといわれるが、そのなかでも本作は最大級の作品である。富士の姿は水墨画の手法を用い、空には燃え立つような真紅の太陽を浮かばせる。いずれも日本を象徴するモチーフであり、大観が得意とした画題である。

展覧会への出品後は、昭和天皇へ献上され、さらに本作のおよそ3分の1ほど、ミニチュア版というべき富士の絵も香淳皇后に献上されている。尊皇の心が強かった大観にとって、当初から皇室への献上を意識して制作された作品であったことは間違いない。大画面に向かいながら、力強く入魂の筆をふるう巨匠の姿がしのばれる。

なお、「日出処日本」とほぼ同じ時期に、姉妹作というべき大作「霊峰富士」(1939年)も描かれている。読売新聞社の依頼で描かれた同作は、現在も東京・大手町の読売新聞東京本社を訪れる人たちを出迎えてくれる。大観の知られざる傑作といえるだろう。

(皇居三の丸尚蔵館研究員 田中純一朗)

開館記念展「皇室のみやび―受け継ぐ美―」第2期「近代皇室を彩る技と美」

【会期】〔2024年〕3月3日(日)まで ※月曜休館。ただし2月12日(月・振り替え休日)は開館し13日(火)休館。2月23日(金・祝)休館。会期中一部展示替えあり。
【会場】皇居三の丸尚蔵館(皇居東御苑内)
【主催】皇居三の丸尚蔵館
【問い合わせ】050・5541・8600(ハローダイヤル)

展覧会について詳しくはこちら → 
https://shozokan.nich.go.jp/exhibitions/miyabi.html

(2024年2月4日付 読売新聞朝刊より)

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