茶碗という限られた形式の中で、表現は年を追って大きく変化する。2001年制作の本作は、中でも最も荒々しい彫刻的な表現に因っている時期の作品。釉調に華やかさは消え、陰鬱で昏く重たい。茶碗の常識から逸脱し、厚い口造りは篦で鋭く切り落とされ、強い箆が切り込まれ大きく歪み、どっしり重い。「自然と美の形」として様々形容できようが、さしずめ「深山巌裂」、峨々としてそそり立つ大巌と言うところだろうか。
樂 直入(1949- )Raku Jikinyū
京都府生まれ。1973年東京藝術大学彫刻科卒業後にイタリアへ留学、1976年帰国して樂茶碗を作りはじめた。1981年十五代吉左衞門襲名。1987年日本陶磁協会賞(1992年同金賞)、1991年京都美術文化賞、1993年MOA岡田茂吉賞優秀賞受賞(2006年同大賞)、1998年毎日芸術賞等の受賞を重ね、2000年にはフランス芸術・文化勲章シュバリエ章を受章した。樂焼の祖・長次郎から継承される樂の美と伝統の本質に対峙しつつ、手捏ねと箆削り、絵画的な彩色、そして焼貫の焼成手法によって、樂焼に新たな現代造形の可能性を見出した。2019年直入改名。京都府京都市在住。
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