藍染の糸は織り重なり、時と空間を奏でる。白き絣と青き絣は光を放つ。家業を継承する5代目の私は、絵絣、大絣・中絣を得意とする松枝家独特の絵台仕様による独創的絵糸書きの技法で「絵絣」を制作している。
「藍甕に浸して絞るわたの糸 光にかざすとき匂ひたつ」 2010年宮中歌会始の儀・預選者。
絣括り終えた糸を染めるなど、絣作りは36工程あり、忍耐強く絣括りをし、染め解きをして、機織りをする自己完結の手仕事である。織り成す布には、長い歳月のエネルギーが籠められる。心の結集である。その時折の想いを作品に籠めて、二つの手を最大限に生かし、今日も手括り、染め、織っている。
松枝 哲哉(1955-2020) Matsueda Tetsuya
福岡県生まれ。中学生の頃から祖父の松枝玉記に藍染め、手織り、手括りなどの久留米絣の伝統の技法を学び、1979年重要無形文化財久留米絣技術伝承者となり、2003年に国の重要無形文化財久留米絣技術保持者の認定を受けた。伝統工芸を主体に活動し、日本伝統工芸展で2010年及び2020年に優秀賞を受賞した。自然の風景や気象、星の煌めきなどを鋭敏な感性で意匠化し、藍と白のコントラストを効果的にした大柄の絵絣の制作を中心とした。福岡県久留米市在住、2020年7月急逝。
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