ガラス素材が持つ「やわらかな」表情を伝統技法である切子技法で表現したいと考えています。この作品は、「ゆらぎ」のある線彫りと和紙を透かして見る「柔らかい光」の表情で制作しました。冬、日が西に傾いた頃、和室の中で障子戸を透かして見た光はやわらかく、この光を器で表現できないかと考えました。和紙を光に透かして見ると、単一で無機質なものではなく、小さい粒の濃淡が不規則に並び、ゆるやかな凹凸の面を構成していることに気が付きます。それを器で表現するため、白ガラスを粉にして判押ししたものを高温で焼き付けすることで和紙のような、やわらかな光を表現しております。
安達征良(1969- ) Adachi Masao
山形県生まれ。1996年東京ガラス工芸研究所卒業。2001年から2006年まで金沢卯辰山工芸工房にガラス専門員として勤務し、2007年独立した。伝統工芸を主体に活動し、日本伝統工芸展で2012年に奨励賞、2017年には優秀賞を受賞した。ガラス素材のもつ柔らかい表情に着目し、切子技法を主にして、ややマットな器胎に手彫りで揺らぐ筋文を連ねるなどの繊細な表現を求めている。《硝子絹糸紋鉢 夕陽》は、和紙を透かしたような柔らかい夕の光を映す平鉢で、独特の摺りに似た肌合いをもち、紡いだ絹糸のような切子の筋文様が側面を巡っている。千葉県大網白里市在住。
0%