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2024.1.31

「曽根崎心中」― 壱太郎・右近 初のコンビで2月大阪上演

歌舞伎俳優・中村壱太郎かずたろうと尾上右近のコンビで、近松門左衛門の代表作「曽根崎心中」が上演される。壱太郎がヒロイン・お初を演じるのは3度目。右近は、壱太郎の父・中村鴈治郎がんじろうの指導を受け、恋人の徳兵衛に初役で挑む。

「曽根崎心中」ゆかりの大阪・お初天神を訪れた中村壱太郎(左)と尾上右近
お初役3度目 壱太郎「命懸けで稽古」
徳兵衛役切望 右近「役者人生の転機」

2010年に19歳で初めてお初を演じた壱太郎。「着物の裾の持ち方も知らず、基本を習得していない時の大役。楽屋で泣いた日もあった」と振り返る。

祖父の坂田藤十郎は、1953年の復活上演でお初を演じて一世を風靡ふうびし、生涯当たり役とした。上演回数が1000回を超えても「上手揚幕あげまく(役者の出入り口)に立つと初心に戻る」と語っていたという。上方を本拠とする鴈治郎家にとって特別な演目だ。

「同じ家の役者だけで継承していくことも大事だけど、一門以外のみんなが『演じたい』と思う作品でなければ残っていかない」と考え、右近との共演に臨む。その上で「右近君とのセッションを大事に、限られた日数の稽古に命懸けで取り組む」と決意を新たにする。

一方、右近は5年ほど前から「徳兵衛をやってみたい」と切望してきた。近松の原作戯曲を読み、「人間の未熟さや矛盾、若さへの永遠の憧れを感じる。色あせない不思議な力がある。人物への客観的視点やリアルな造形に共感できる」と分析する。

「今の自分の未熟さは、徳兵衛の未熟さにつながる。上方出身ではない自分が上方の芝居に挑戦することで歌舞伎界の可能性が広がれば。役者人生のターニングポイントになる公演です」

〔2024年〕2月2~18日、大阪松竹座「立春歌舞伎特別公演」夜の部で上演。昼の部は片岡愛之助らの「源平布引滝」。夜の部はほかに鴈治郎らの「新版色讀販うきなのよみうり」など。(電)0570・000・489。

(2024年1月24日付 読売新聞夕刊より)

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