国立劇場10月歌舞伎公演は、歌舞伎三大名作の一つ「義経千本桜」が上演される。尾上菊之助さん(45)が主役の三役(知盛・権太・忠信)に挑む話題の公演だ。
2020年3月に予定されたが、コロナ禍で全日程中止となり、無観客で収録した舞台映像がユーチューブで無料公開された。
「稽古するたびに中止要請が来て、すべて公演がなくなった時はつらい気持ちでいっぱいで……。時計の針が心の隅で止まった気がしました」と菊之助さんは振り返る。
今回は「初代国立劇場さよなら公演」の歌舞伎第1弾としての“再演”が決まり、「今は興奮の感情でいっぱいです」と笑顔を見せる。全五段の物語の大半を見せる「通し狂言」と銘打ち、二段目にあたるAプロ(主役・渡海屋銀平実ハ新中納言知盛)、三段目の Bプロ(同・いがみの権太)、四段目の Cプロ(同・佐藤忠信実ハ源九郎狐)の3パターンを上演する。権太と忠信は父の尾上菊五郎さん(80)、知盛は昨年77歳で亡くなった義父の中村吉右衛門さんの教えを受けた。「Aプロは『幼子への愛』、Bプロは『義』、Cプロは『忠』が、演じるテーマ」と言う。
「勝者のない物語ですが、愛、忠、義を作者が深く描いている。千本の桜のように登場人物が美しく咲き、きれいに散っていく。ストーリーの素晴らしさを感じています」
10月26日まで。問い合わせは、0570・07・9900。
(2022年10月2日付 読売新聞朝刊より)
0%