2022.3.12

国立劇場3月歌舞伎公演『近江源氏先陣館-盛綱陣屋-』2組の親子共演が話題に

3月歌舞伎公演に出演中の(右から)尾上菊之助、尾上丑之助、小川大晴、中村梅枝(国立劇場提供)

国立劇場(東京・半蔵門)の3月歌舞伎公演は『近江源氏おうみげんじ先陣館せんじんやかた盛綱もりつな陣屋じんや-』を上演中です。 大坂の陣を題材に、敵味方に分かれた兄弟の駆け引きと家族の情愛が、スリリングな展開で繰り広げられる人気の一幕です。

この公演は《歌舞伎名作入門》と銘打ち、古典歌舞伎の醍醐味にあふれた名作を気軽にお楽しみいただけるよう、本編に先立って作品の魅力やみどころについてわかりやすく案内する「入門 “盛綱陣屋”をたのしむ」の上演があります。歌舞伎になじみの薄いお客様から愛好家の方まで、存分にご堪能いただけます。

今回は尾上菊之助が、初代中村吉右衛門から岳父・二代目吉右衛門へ継承された盛綱に初役で挑み、長男の尾上丑之助うしのすけ小四郎こしろうを勤めます。

また中村梅枝ばいしが、中村時蔵家に代々受け継がれる篝火かがりびに初役で挑み、長男の小川大晴ひろはるが、小三郎こさぶろうを勤めます。二組の親子競演が話題を呼ぶ舞台です。

公演に先立ち、尾上菊之助、中村梅枝、尾上丑之助、小川大晴が意気込みを語りました。

尾上菊之助(佐々木盛綱)

『近江源氏先陣館-盛綱陣屋-』は、人と人とのつながりが強く描かれている作品です。この時代物の中では、子供を犠牲にしてまで忠義を立てるという世界観が描かれ、現代ではナンセンスに思えてしまうのかもしれません。ですが、この歌舞伎の中には、大切なハイセンスなものが隠れています。

盛綱という人物を考えると、北條への忠義を立てれば弟の義を殺してしまう、弟の義をたてれば北條への忠義を殺してしまう、という中で首実検に挑みます。その中で彼は、人間の一番大切にしなくてはいけない「恕(じょ)」、人のことを深く思いやるということを悟ります。

首実検はじっくりと時間をかけますが、その理由はこの「恕」という言葉から読み取ることができます。きっとお客様にも、人と人とのつながりを深く考えていただくきっかけになるのではないでしょうか。

このお芝居は、佐々木一族の家族の物語で、もしかすると江戸時代の庶民も、なぜ武家はここまでしなければならないのかと思ったかもしれません。しかし、武士たちにとって一族が守らなければならない家訓、どのように生きるかという武士道はとても大切なものです。

高綱・盛綱兄弟が分かれ、生き残りをかけての戦で高綱が負けたことによって、盛綱はもし自分が敗者となりこの首実検に至った場合、自分が高綱のような行動が取れるのかと言うことを突きつけられます。そして、その間に立ったときに、盛綱は佐々木家が代々大事にしてきた家訓というものを悟り、行動に移したのだと思います。

人間が大事にしなければならない“人の心を察する”ということを、作者の近松半二は描きたかったのではないでしょうか。そして、その思いを汲み、名優たちが「型(かた)」に残してきたのだと思います。とくに首実検の場は、武士として最も美しい、まさに作者の心と役の心の交差点、人物が浮き上がるような「型」になっていると思います。

「型を追うだけでなく、型を通して内面を感じ取る」

岳父(中村吉右衛門)の台本が何冊か残っていて、その中には事細かに役について書き残してくださったものがあります。それとは別にこの役で大事なことを岳父がまとめてくださっている書物もございます。それらを紐解きながら、岳父や初代吉右衛門の映像を参考に、そして岳父との共演も多かった、中村歌六のお兄さんや中村又五郎のお兄さん、中村吉之丞さんに助言をいただきながら創っていきたいと思っています。

私たち後世の人間は先人の創り上げた型を真似るだけではなく、心を深く考えてなぜこの型が残っているのかということに立ち返り、この名作に挑んでいかなければなりません。型を追うだけでなく、型を通して内面を感じ取ることが非常に大切です。「頭では解っていても実際にできてないじゃないか」と岳父に叱られないように、今まで岳父に教えてきていただいた数々のお役も参考にしながら役作りを考えていきたいと思います。

中村梅枝(高綱妻篝火)

初役で篝火を勤めさせていただきます。曾祖父(三代目中村時蔵)、祖父(四代目中村時蔵)、父(中村時蔵)と代々勤めているお役を勤めさせていただけるのは、非常にありがたく思っております。

この作品で一番のテーマは「絆」、兄弟の絆、親子の絆、夫婦の絆というものを非常に強く感じることのできる作品です。あの時代に、人の命よりも大事な、優先順位の高いものがあった中で、その優先順位を捨ててまで、盛綱は人情をもって、家族というものを優先します。

ただ、それをひとつのホームドラマにしてしまうとこの作品は面白くなくなってしまいます。非常に大きな時代背景があって、それに巻き込まれてしまった一つの家族にスポットが当たるように、私もそれを肝に命じながら、作品としての大きさを出していきたいと思っております。

父にも言われておりますが、舞台には出てこない高綱を、いかにお客様にきちんと認識してもらえるのかが大切になると思います。弟としての高綱、親としての高綱、旦那としての高綱というものを、お客様が感じることができるようなお芝居になれば、推理劇としても、そしてまた一つの家族のドラマとしても深みを増していくと思います。

初役には特別な緊張感があります。役を教わり、それをなぞらえていきますし、教えていただいた方に失礼のないように、など、様々なことを考えます。今回のように、菊之助のお兄さんも、私も初役という機会は多く、音羽屋(尾上菊五郎)のおじ様や、播磨屋(中村吉右衛門)のおじ様から、菊之助のお兄さんがご指導を受けている様子を見聞きできるのは、私にとっても非常に楽しいですし、相手役の私にも、ここはこうして欲しい、こうやってくれるとやりやすいなどと指導していただけて、非常に勉強にもなります。

今回は菊之助さんのご子息の丑之助さん、息子の大晴も出演させていただきます。丑之助さんは受け答えもしっかりされていますし、いずれは大晴にも小四郎のような大きなお役を演じてもらいたいと思うので、丑之助のお兄ちゃんのことをよく見て、お勉強してくれればと願っております。

尾上丑之助(高綱一子小四郎)

小四郎を演じます。どうぞよろしくお願いいたします。大変ですが立派なお役ですので(2021年9月以来)また演じられて嬉しいです。義太夫に合わせたり、最後に倒れるたりするところが難しかったので、今度はもっと上手にやりたいです。

小川大晴(盛綱一子小三郎)

小三郎を勤めさせていただきます。よろしくお願いします。鎧は重いですが、かっこよくなれることが楽しみです。

公式サイトはこちら https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/kokuritsu_l/2021/243327.html

Share

0%

関連記事