2021.10.13

妖刀「青江下坂」をめぐる数奇なドラマ 通し狂言「伊勢音頭恋寝刃」…国立劇場10月歌舞伎公演

二幕目第一場 古市油屋奥庭の場  福岡貢:中村梅玉  提供:国立劇場、撮影:田口真佐美

国立劇場(東京・半蔵門)では、開場55周年記念として、通し狂言「伊勢音頭いせおんど恋寝刃こいのねたば」が上演されている。

中村梅玉の福岡貢  提供:国立劇場

寛政8年(1796年)5月、伊勢国古市の遊郭・油屋で、地元の医師・孫福まごふくいつきが遊女のおこんと酒を飲んでいた途中、おこんが阿波国の商人の座敷へ移ったことに腹を立て、9人を殺傷する事件が起きた。この作品は、事件を題材に、わずか3日で書き上げられたと伝わる。

手がけたのは、上方の劇壇で活躍した近松徳三。同年7月に初演された世話物の人気演目だ。大名家のお家騒動を背景に、斎をモデルにした主人公・福岡貢と油屋の遊女・お紺との恋、さらに妖刀「青江あおえ下坂しもさか」をめぐる物語が展開する。

序幕第二場 妙見町宿場の場
福岡貢:中村梅玉、藤浪左膳:中村又五郎、今田万次郎:中村扇雀、奴林平:中村萬太郎
提供:国立劇場、撮影:田口真佐美
序幕第五場 二見ヶ浦の場
福岡貢:中村梅玉
提供:国立劇場、撮影:田口真佐美

阿波国の家老の息子・今田万次郎は、将軍家へ献上する妖刀「青江下坂」を入手すべく伊勢に入り、一度は無事入手したものの、謀反人の家来に騙されて刀も折紙(鑑定書)も失ってしまう。刀を探すよう依頼された伊勢の神職・福岡貢が、入手した刀を持ち油屋で万次郎を待ち受けていたところ、仲居の万野は店に預けさせ、謀反人の一味がその刃を抜き替える。そこに貢と恋仲の遊女・お紺が現れて突然の愛想尽かし―。

二幕目第一場 古市油屋店先の場
福岡貢:中村梅玉、仲居万野:中村時蔵、料理人喜助:中村又五郎
提供:国立劇場、撮影:田口真佐美

貢が次第に怒りを募らせる過程が、練り上げられた演出で巧みに表現される。また、刀に操られるように次々と殺める場面も、洗練された歌舞伎の様式美が見ものだ。

国立劇場では、2015年10月に初めて上演され、今回は6年ぶりの通し狂言となる。福岡貢役の中村梅玉さんは制作会見で「このお芝居は、伊勢の風情や情景もポイント。調和のとれた良い舞台を作り上げられれば」と意気込みを語り、仲居万野の中村時蔵さんは「万野は演じていてとても面白い役。通し狂言で、上演機会の少ない場をやることで、物語がよく理解できますし、息子たち若い俳優には芝居の深みというものを学んでもらいたい」と話した。

二幕目第一場 古市油屋店先の場
福岡貢:中村梅玉、油屋抱えお紺:中村梅枝、油屋抱えお鹿:中村歌昇
提供:国立劇場、撮影:田口真佐美
国立劇場 開場55周年記念 10月歌舞伎公演「通し狂言 伊勢音頭恋寝刃」

主な配役
福岡貢:中村梅玉
藤浪左膳・料理人喜助:中村又五郎
今田万次郎:中村扇雀
仲居万野:中村時蔵 ほか
※10月26日まで(18日は休演) 12時開演(15時終演予定)

二幕目第一場 古市油屋店先の場
福岡貢:中村梅玉、仲居万野:中村時蔵
提供:国立劇場、撮影:田口真佐美
二幕目第一場 古市油屋店先の場
福岡貢:中村梅玉、仲居万野:中村時蔵、油屋抱えお紺:中村梅枝、油屋抱えお岸:中村莟玉
提供:国立劇場、撮影:田口真佐美
「青江下坂」のモデル「葵紋康継(葵下坂)」を特別展示

「青江下坂」のモデルは、越前康継が手がけた「葵紋康継(葵下坂)」と言われています。初代康継は近江国・長浜市下坂出身で、越前北ノ荘藩主・結城秀康のお抱え刀工となりました。今回は刀剣博物館(東京・両国)の協力で、公演期間中、大劇場ロビーで「(葵紋)康継以南蛮鉄於越前作之(越前三代)」(江戸時代前期 17世紀中期頃制作、銀座長州屋蔵)を展示しています。

公式サイトはこちら https://www.ntj.jac.go.jp/sp/schedule/kokuritsu_l/2021/3101398.html

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