国立劇場(東京・半蔵門)では、開場55周年記念として、通し狂言「
寛政8年(1796年)5月、伊勢国古市の遊郭・油屋で、地元の医師・
手がけたのは、上方の劇壇で活躍した近松徳三。同年7月に初演された世話物の人気演目だ。大名家のお家騒動を背景に、斎をモデルにした主人公・福岡貢と油屋の遊女・お紺との恋、さらに妖刀「
阿波国の家老の息子・今田万次郎は、将軍家へ献上する妖刀「青江下坂」を入手すべく伊勢に入り、一度は無事入手したものの、謀反人の家来に騙されて刀も折紙(鑑定書)も失ってしまう。刀を探すよう依頼された伊勢の神職・福岡貢が、入手した刀を持ち油屋で万次郎を待ち受けていたところ、仲居の万野は店に預けさせ、謀反人の一味がその刃を抜き替える。そこに貢と恋仲の遊女・お紺が現れて突然の愛想尽かし―。
貢が次第に怒りを募らせる過程が、練り上げられた演出で巧みに表現される。また、刀に操られるように次々と殺める場面も、洗練された歌舞伎の様式美が見ものだ。
国立劇場では、2015年10月に初めて上演され、今回は6年ぶりの通し狂言となる。福岡貢役の中村梅玉さんは制作会見で「このお芝居は、伊勢の風情や情景もポイント。調和のとれた良い舞台を作り上げられれば」と意気込みを語り、仲居万野の中村時蔵さんは「万野は演じていてとても面白い役。通し狂言で、上演機会の少ない場をやることで、物語がよく理解できますし、息子たち若い俳優には芝居の深みというものを学んでもらいたい」と話した。
主な配役
福岡貢:中村梅玉
藤浪左膳・料理人喜助:中村又五郎
今田万次郎:中村扇雀
仲居万野:中村時蔵 ほか
※10月26日まで(18日は休演) 12時開演(15時終演予定)
「青江下坂」のモデルは、越前康継が手がけた「葵紋康継(葵下坂)」と言われています。初代康継は近江国・長浜市下坂出身で、越前北ノ荘藩主・結城秀康のお抱え刀工となりました。今回は刀剣博物館(東京・両国)の協力で、公演期間中、大劇場ロビーで「(葵紋)康継以南蛮鉄於越前作之(越前三代)」(江戸時代前期 17世紀中期頃制作、銀座長州屋蔵)を展示しています。
公式サイトはこちら https://www.ntj.jac.go.jp/sp/schedule/kokuritsu_l/2021/3101398.html
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