日本美を守り伝える「紡ぐプロジェクト」公式サイト

2023.1.10

中村時蔵さん 新たな「遠山桜」 国立劇場 最後の初春公演

「遠山桜天保日記」の終盤、粋な芸者姿になって踊る中村時蔵さん(2023年1月3日)=国立劇場提供

国立劇場(東京・半蔵門)で〔2023年1月〕3日から「通し狂言 遠山桜天保日記」が上演されている。現在の国立劇場は今秋に閉場の予定で、最後の初春公演。毎年、座頭の尾上菊五郎さんを支えて正月の舞台に立ち続けてきた中村時蔵さんに、公演への思いを聞いた。

◆角太夫女房「おもと」役 孫世代の活躍にも期待

「遠山桜――」は時代劇「遠山の金さん」でもおなじみの名奉行、遠山金四郎(菊五郎さん)が活躍する物語。国立劇場では2008年12月以来、14年ぶりの上演となる。今回新たに芝居小屋の場が加わるなど、より正月らしい、華やかな演出になった。時蔵さんは、武士から悪党になった生田角太夫(尾上松緑さん)に翻弄ほんろうされる女房のおもとと、河原崎座役者の2役を演じている。

初芝居への思いを語る中村時蔵さん

14年前にも勤めていたおもと役だが、「前回やったことを基本に、新しく付け加えた部分もあります」と語る。前回はおもとと、その娘おわかの2役を演じ分けたが、今回は長男の中村梅枝さんにおわか役を託した。また、梅枝さんの長男の小川大晴君を始め、菊五郎さん、時蔵さんにとって「孫世代」が活躍する場があることも、うれしいという。

時蔵さんは国立劇場の歌舞伎俳優研修の主任講師として、また日本俳優協会の理事として、2023年も歌舞伎界全体の発展のために尽くす考えだ。「国立劇場の閉場中は、沖縄など全国あちこちで公演したい。(長引くコロナ禍で)できなかった俳優祭(ファン感謝デー)も、閉場前の国立劇場で開ければ」と目標を語った。公演は〔1月〕27日まで。

(2023年1月8日付 読売新聞朝刊から)

Share

0%

関連記事