歌舞伎俳優・尾上松也が主演・演出を兼ねる新作歌舞伎「刀剣乱舞
東鑑雪魔縁 」が〔2025年〕8月、京都・南座で上演される。人気ゲームを原案に2023年に初演した作品の続編。鎌倉幕府の3代将軍・源実朝暗殺事件をモチーフにストーリーが展開する。中村獅童ら新たな出演者を迎え、松也の演出力が再び発揮される。(編集委員 坂成美保)
「歴史が題材のゲームだから、きっと歌舞伎との相性がいいはず」との発想を出発点に、初演で「自分の思い描く世界が具現化され、観客に見てもらえる。何ものにも代えがたい達成感を味わった」という松也。
歌舞伎ファンにとっては「昔からあるような気がするけれど、見たことない作品」、ゲームファンにとっては「歌舞伎になっても違和感なく、キャラクターが躍動していること」を理想に掲げ、取り組んできた。
演出や制作を意識するようになったきっかけは15年に南座で出演した新作歌舞伎「あらしのよるに」。絵本シリーズの歌舞伎化を手がけた獅童の言葉だった。「自分の代名詞といえるような歌舞伎を自分で手がけないとダメだよ」。以来、「いつか僕も新作をやりたい。その時には獅童さんに関わってもらいたい」と温めてきた。
初演では声の出演のみだったが、今回は念願の獅童との共演が実現する。「恩返しの意味も込め、長年の夢がかなった」と喜ぶ。
数日間の稽古で本番を迎える古典歌舞伎とは異なり、稽古期間は1か月に及ぶ。
「稽古は、役者のクオリティーを上げるだけではなく、実験を繰り返す時間。自分で思い描いたことが形になっていく一方で、役者が立って演じると、想定外のことが起きて影響を受け、プランを変えていく。役者側の提案も、まずはやってみることを心がけたい」
初演から演じる三日月
設定は鎌倉時代、実朝暗殺事件を題材に、暗殺を阻止しようとする集団と遂行を目指す集団の対立が軸になる。立ち回りや舞踊シーンも増えるという。
「ゼロから創りあげていく新作には、恐怖心やプレッシャーも付きものだが、挑戦したいという思いは変わらない。みんなで一つのものをつくる喜びがある。出演者たちが作品に愛着を持ってくれるような稽古場の雰囲気作りに徹したい」
◇歌舞伎「刀剣乱舞 東鑑雪魔縁」
8月15~26日、南座。原案は「刀剣乱舞 ONLINE」。脚本は松岡亮。尾上松也、日本舞踊尾上流四代家元・尾上菊之丞 の共同演出。中村莟玉 、上村吉太朗、中村鷹之資 、河合雪之丞 ら初演メンバーに中村獅童、歌昇 、尾上左近ら新キャストが加わる。☎0570・000・489。
(2025年6月25日付 読売新聞大阪本社版夕刊より)
◆歌舞伎「刀剣乱舞」公式サイトはこちら https://kabuki-toukenranbu.jp/
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