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2026.2.18

亡き師匠の当たり役に挑む 竹本織太夫おりたゆうさん「絵本太功記えほんたいこうき」 「妙心寺の段」— 2月11日から横浜で

咲太夫さんとの稽古の様子を熱く語る織太夫さん(1月15日、大阪市中央区の国立文楽劇場で)=東直哉撮影

国立劇場主催の文楽公演が〔2026年2月〕11~23日、横浜市のKAAT神奈川芸術劇場で開かれる。本能寺の変で織田信長を討った明智光秀を軸に、武将の苦悩や家族の悲劇を描いた「絵本太功記えほんたいこうき」が19年ぶりに通し上演される。クライマックスの「尼ヶ崎の段」につながる「妙心寺の段」を、実力派太夫の竹本織太夫おりたゆうさんが語る。亡き師匠・豊竹咲太夫さんの当たり役を、本公演で初めて勤める。

「絵本太功記」は、織田信長を尾田春長、明智光秀を武智光秀、羽柴秀吉を真柴久吉と名を置き換えて、光秀が主君の春長を本能寺で討ち、久吉に討伐されるまでの13日間を、1日1段に分けて描く。

発端「安土城中の段」から始まり、六月朔日ついたち「二条城配膳の段」、二日「本能寺の段」、六日「妙心寺の段」、十日「尼ヶ崎の段」などと展開する。

「妙心寺の段」(2016年5月、国立劇場)=国立劇場提供

「妙心寺」は、光秀が母や息子の死に直面する「尼ヶ崎」に続く見せ場だ。春長を討った光秀は、主殺しが不忠として母に拒絶されて思い悩み、辞世の句を書き残して切腹を覚悟する。しかし、家臣の説得で思いを改め、久吉を討つ許しを得るため、宮中へ向かう。

「咲太夫師匠の光秀が、僕の中での光秀像です。表情、指先の動き、首の傾き加減まで覚えているんです」。長く文楽を先導し、2024年に亡くなった咲太夫さんの姿が脳裏に焼き付いている。8歳で咲太夫さんに入門し、10代の頃から稽古をつけてもらった思い入れの強い演目だ。

太夫は、人物のせりふや場面の状況など、物語の全てを一人で語る。咲太夫さんは稽古で、目をカッと見開き、声を震わせ、はらはらと涙を流した。さらに、辞世の句を書く筆を持つ手や首の動き、視線運びに至るまで、全ての動きを通して、浄瑠璃を語るとは、ここまで物語の世界に入り込むことなのだと、織太夫さんに伝えた。「師匠の語りは、力で押し切っているように聞こえたかもしれないが、ものすごく細かな仕事をしていた。全部が理にかなっていて震えるくらいかっこよかった」。咲太夫さんの一挙手一投足を再現する。

咲太夫さんからの教えを書き留めた床本(ゆかほん)

19歳で開いた人形の出ない素浄瑠璃の自主公演でも「妙心寺」に挑戦し、本公演では今回初めて勤めることに自分でも驚いたほど、何度も語ってきた。2024年に始めた「浄瑠璃を聴く会」では、弟子の竹本織栄太夫おりえだゆうに「妙心寺」を語らせた。「教えることで、師匠に言われたことを思い出すこともある」

咲太夫さんの父で、昭和の名人・八代目竹本綱太夫が名乗った織太夫を六代目として襲名し、8年がたった。「納得のいく舞台を一日でも長く勤めることが目標。明日できるのかなというくらい、ヘロヘロになるまで毎日を過ごしていますから」。鮮明に覚えている師匠の姿を目に浮かべ、覚悟を語った。

コンビを組む三味線は鶴沢燕三えんざ。第1部(午前11時開演)と第2部(午後2時45分開演)は「絵本太功記」、第3部(午後6時半開演)は「勧進帳」。(電)0570・07・9900。

(2026年2月1日付 読売新聞朝刊より)

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