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2019.10.25

【雅楽】よみがえる古代の楽曲 正倉院宝物の復元楽器の音色も聞きどころ

国立劇場11月雅楽公演「雅楽-アジアの響き-」

©伶楽舎

10月に行われた天皇陛下の即位を祝う「饗宴きょうえんの儀」で、賓客をもてなすために演奏された雅楽。1000年以上前に、日本古来の歌と舞に、シルクロードを経て海外から伝わった音楽や楽器、舞などが融合して成り立った伝統音楽だ。その雅楽を、正倉院の宝物から復元した楽器などで演奏する「雅楽-アジアの響き-」が、11月9日午後2時から東京・半蔵門の国立劇場小劇場で開かれる。雅楽と公演の魅力を国立劇場制作部の荒井菜摘さんに聞いた。

中国、朝鮮、インド…国際色豊かなルーツ

一口に「雅楽」と言っても、中国の音楽と舞に由来する「唐楽とうがく」、朝鮮半島伝来の「高麗楽こまがく」、日本古来の民謡を元にしており、歌詞のついた「催馬楽さいばら」など様々なスタイルがある。それぞれ形式や用いる楽器が異なり、東南アジアやペルシャ、インドなどの音楽文化も受け継いでいるとされている。

「今は神社で演奏されるというイメージが強いですが、奈良時代には東大寺の大仏開眼会の際にも演奏されるなど仏教とのつながりもあります。平安時代に入って日本化が進みました」と荒井さん。今回の公演の前半では、唐楽、高麗楽、催馬楽をそれぞれ演奏する。

戦後、身近に聞ける機会が

雅楽は、宮中や寺社など限られた場所での演奏が中心だったが、「戦後、宮内庁楽部による演奏会や国立劇場での公演が行われるようになり、民間の演奏グループも増えて、身近に接する機会が広がりました」と荒井さんは話す。

今回出演するのは、1985年に発足した「伶楽舎れいがくしゃ」だ。文化勲章受章者で、今年7月に亡くなった雅楽演奏家の芝祐靖さんが設立した演奏グループで、古典に加えて今は演奏されなくなった曲の復曲や新曲なども積極的に手がけ、海外でも活動している。

復元楽器で、最古の楽曲を演奏

後半で演奏されるのが、正倉院から発見された古代の楽譜を元にした「番假崇ばんかそう」と、現存する最古の横笛おうてき譜に記されていた「曹娘褌脱そうろうこだつ」。いずれも芝さんが復曲したもので、正倉院の復元楽器を使って演奏するのが、公演の聞きどころの一つだ。

正倉院復元楽器 五絃琵琶(国立劇場提供)
正倉院復元楽器  箜篌 (国立劇場提供)

荒井さんによると、国立劇場は70年代から、今では使われなくなった古代の楽器の復元に取り組み、これまで20近い楽器をよみがえらせてきたといい、今回は、東京国立博物館で開催中の「正倉院の世界―皇室がまもり伝えた美―」展にも展示された五絃琵琶(展示は11月4日まで)や、ハープのような箜篌くご、打楽器の磁鼓じこなどの復元楽器を使用する。

荒井さんによると、楽譜が残っていたとはいっても、どのように演奏していたかは不明の点も多く、「芝さんがご自身の雅楽の経験をいかして、現代によみがえらせた楽曲です。音楽の響きも楽器の音色も、今の雅楽とは異なった趣きになっています」と話す。

「雅楽から知るアジアのつながり」と題し、伶楽舎の宮丸直子さんと、東京国立博物館の三田覚之研究員が復元楽器などについてのトークと実演も行う。

11月の大嘗祭だいじょうさいでも演奏されるなど、雅楽は儀礼のイメージが強いが、荒井さんは「すべてが儀礼用の音楽というわけではなく、貴族の楽しみとしても演奏されてきました。日本の伝統芸能ながら、国際的な響きを持つのが雅楽の面白さ。リズミカルな楽曲もあり、音楽的な魅力も楽しんでいただきたい」と話していた。

公式サイトはこちら

https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/kokuritsu_s/2019/9137.html

開催概要

日程

11月9日午後2時開演

会場

国立劇場 小劇場
〒102-8656 東京都千代田区隼町4-1

料金

全席指定 4,500円  学生 3,200円 (いずれも税込)

詳細はチケットセンターまで
https://ticket.ntj.jac.go.jp/

お問い合わせ

国立劇場チケットセンター(10時~18時)
0570-07-9900
03-3230-3000(一部IP電話等)

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