10月に行われた天皇陛下の即位を祝う「饗宴の儀」で、賓客をもてなすために演奏された雅楽。1000年以上前に、日本古来の歌と舞に、シルクロードを経て海外から伝わった音楽や楽器、舞などが融合して成り立った伝統音楽だ。その雅楽を、正倉院の宝物から復元した楽器などで演奏する「雅楽-アジアの響き-」が、11月9日午後2時から東京・半蔵門の国立劇場小劇場で開かれる。雅楽と公演の魅力を国立劇場制作部の荒井菜摘さんに聞いた。
一口に「雅楽」と言っても、中国の音楽と舞に由来する「唐楽」、朝鮮半島伝来の「高麗楽」、日本古来の民謡を元にしており、歌詞のついた「催馬楽」など様々なスタイルがある。それぞれ形式や用いる楽器が異なり、東南アジアやペルシャ、インドなどの音楽文化も受け継いでいるとされている。
「今は神社で演奏されるというイメージが強いですが、奈良時代には東大寺の大仏開眼会の際にも演奏されるなど仏教とのつながりもあります。平安時代に入って日本化が進みました」と荒井さん。今回の公演の前半では、唐楽、高麗楽、催馬楽をそれぞれ演奏する。
雅楽は、宮中や寺社など限られた場所での演奏が中心だったが、「戦後、宮内庁楽部による演奏会や国立劇場での公演が行われるようになり、民間の演奏グループも増えて、身近に接する機会が広がりました」と荒井さんは話す。
今回出演するのは、1985年に発足した「伶楽舎」だ。文化勲章受章者で、今年7月に亡くなった雅楽演奏家の芝祐靖さんが設立した演奏グループで、古典に加えて今は演奏されなくなった曲の復曲や新曲なども積極的に手がけ、海外でも活動している。
後半で演奏されるのが、正倉院から発見された古代の楽譜を元にした「番假崇」と、現存する最古の横笛譜に記されていた「曹娘褌脱」。いずれも芝さんが復曲したもので、正倉院の復元楽器を使って演奏するのが、公演の聞きどころの一つだ。
荒井さんによると、国立劇場は70年代から、今では使われなくなった古代の楽器の復元に取り組み、これまで20近い楽器をよみがえらせてきたといい、今回は、東京国立博物館で開催中の「正倉院の世界―皇室がまもり伝えた美―」展にも展示された五絃琵琶(展示は11月4日まで)や、ハープのような箜篌、打楽器の磁鼓などの復元楽器を使用する。
荒井さんによると、楽譜が残っていたとはいっても、どのように演奏していたかは不明の点も多く、「芝さんがご自身の雅楽の経験をいかして、現代によみがえらせた楽曲です。音楽の響きも楽器の音色も、今の雅楽とは異なった趣きになっています」と話す。
「雅楽から知るアジアのつながり」と題し、伶楽舎の宮丸直子さんと、東京国立博物館の三田覚之研究員が復元楽器などについてのトークと実演も行う。
11月の大嘗祭でも演奏されるなど、雅楽は儀礼のイメージが強いが、荒井さんは「すべてが儀礼用の音楽というわけではなく、貴族の楽しみとしても演奏されてきました。日本の伝統芸能ながら、国際的な響きを持つのが雅楽の面白さ。リズミカルな楽曲もあり、音楽的な魅力も楽しんでいただきたい」と話していた。
https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/kokuritsu_s/2019/9137.html
開催概要
日程
11月9日午後2時開演
国立劇場 小劇場
〒102-8656 東京都千代田区隼町4-1
全席指定 4,500円 学生 3,200円 (いずれも税込)
詳細はチケットセンターまで
https://ticket.ntj.jac.go.jp/
お問い合わせ
国立劇場チケットセンター(10時~18時)
0570-07-9900
03-3230-3000(一部IP電話等)
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