「紡ぐプロジェクト」の文化財修理助成事業で25日、比叡山延暦寺(大津市)所蔵の重要文化財「道邃和尚伝道文」と、高野山金剛峯寺(和歌山県高野町)所蔵の重文「木造執金剛神立像・木造深沙大将立像」の像内納入品の修理が完了し、京都、奈良の国立博物館で、関係者が状態を確認した。
延暦寺を開いた天台宗祖・最澄が中国の高僧・道邃から伝授されたとされる「道邃和尚伝道文」は、紙が折れ、傷みが激しかったため、昨年6月から京都国立博物館(京都市)で修理。裏打ち紙を外し、剥落はくらく止めや虫食いの補修もした。この日は、延暦寺の僧侶や文化庁の担当者らが修理した部分を確認した。
奈良国立博物館(奈良市)の修理所では、金剛峯寺の担当者や修理技術者らが「木造執金剛神立像・木造深沙大将立像」の胎内に納められていた経典を確認。昨年4月からの修理作業では、固着した巻物に蒸気を当てて開き、補修紙を貼るなどした。
金剛峯寺・高野山霊宝館の鳥羽正剛学芸員は「傷んでいた紙がきれいになり、経文がはっきりと読める。初めて読解できる部分もあり、研究に役立つ」と喜んでいた。
(読売新聞大津支局 渡辺征庸 、大阪本社文化部 佐藤行彦)
(2020年3月26日付読売新聞朝刊より掲載)
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