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2020.1.8

【修理リポート】比叡山延暦寺の伝道文 本紙裏に写経見つかる

「道邃和尚伝道文」の裏に書かれた経文に見入る宇代学芸員(左)ら(京都市で)

文化庁、宮内庁、読売新聞社が推進する「紡ぐプロジェクト」の事業で修理が進む重要文化財「道邃和尚伝道文どうずいかしょうでんどうもん」(平安時代)について、京都国立博物館(京都市)で2019年11月、所蔵する比叡山延暦寺(大津市)の関係者らが集まり、修理経過などが話し合われた。

伝道文(縦約25センチ、長さ約82センチ)は、中国・唐で天台宗の教えを学んだ最澄が、中国天台第7祖の道邃から授けられた古文書。本紙の裏に後世、別の紙(裏打ち紙)を足したことで本紙に激しい折れが生じ、墨書の文字も見えにくくなるなど傷みが激しかった。

2019年6月から始まった修理で裏打ち紙を外したところ、本紙裏に直接、大般若経の一部が書写されていることが判明した。

修理を担う「光影堂」(京都市)の澤田篤志・主任技師らが、延暦寺国宝殿の宇代貴文学芸員らに経過を報告。宇代学芸員は「本紙の裏に写経されていたとは驚きで、重要な意味がありそう。さらに新発見があるかもしれず、経過を見守りたい」と期待した。

20年3月には修理を終える予定で、澤田主任技師は「本紙の表も裏も鑑賞できるようになる。慎重に作業し、貴重な文化財を次世代に伝えたい」と語った。

(読売新聞大津支局 渡辺征庸)

(2019年11月19日読売新聞朝刊より掲載)

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