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2025.12.26

【修理リポート】重要文化財「蘭亭曲水図らんていきょくすいず」(京都・隨心院蔵)― 萌葱色の大縁で華やかさ

実際に裂を当て、完成後をイメージしながら検討した(京都国立博物館で)

17世紀前半に活躍した画家・狩野山雪の代表作、重要文化財「蘭亭曲水図らんていきょくすいず」(京都・隨心院蔵)は、今年春に寄託先の京都国立博物館(京都市)から同館文化財保存修理所に運ばれ、作業が進められている。

全4隻の屏風びょうぶで、つないだ長さは14メートル以上。353年、中国・浙江省の蘭亭で開かれた風雅の会を画題に、画面右から左へ、滝から流れる水にハスの葉にのせた酒杯を浮かべ、両岸に並ぶ文人42人が漢詩をつくる風景が絵巻物のように描かれる。修理前は、特に流水部分の白絵の具の損傷が激しく、表側からにかわ水溶液を慎重に塗布し、剥落はくらく止めを行っている。

〔2025年〕7月に所蔵者や文化庁調査官らが集まって開かれた監督協議では、新調する表具に用いるきれを検討し、本紙の周りの「小縁こべり」にはやや白っぽいもの、その外側の「大縁おおべり」には萌葱色もえぎいろのものを選んだ。修理を担当する岡墨光堂の岡岩太郎社長は「力強い絵。萌葱色と合わせるとさらに華やかな印象になる」と説明した。

表側の剥落止めが完了した後は、解体し、下地から取り外して裏打うらうち紙の除去を進める。

(2025年12月7日付 読売新聞朝刊より)

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