歌舞伎界の大名跡「尾上菊五郎」の八代目を尾上菊之助が、長男の
丑之助 が六代目菊之助を同時襲名し、〔2025年〕5~6月、東京・歌舞伎座で襲名披露が行われている。関西では7月、大阪松竹座で開催される。(編集委員 坂成美保)
父・七代目菊五郎から、「おめえ、継げよ」と唐突に言われたのは2年前。「名前はどうされるのですか」と父の名跡について尋ねると父は「俺はこのままでいく」と答えた。七代目と八代目が同時代に並び立つことに「前代未聞のことだな」と戸惑いながらも、決意を固めた。
「父の大きな背中に追いつきたくて芝居をしてきた。父がいてくれることで身が引き締まる。その存在そのものが、父から私に贈られる言葉だと思っています」
初代は京都に生まれ、女形から
八代目は、理想の菊五郎像を「伝統と革新の両輪をなす役者」と考える。「型を正しく継承した上で役になりきる。古典の魅力を伝えられる役者が理想。音羽屋の歴史をすべて受け止めて時代物、世話物、舞踊を磨き続けたい。途絶えた作品の復活や新作にも取り組みます」
披露演目は、菊五郎の代名詞でもある江戸世話物の代表作「
家の芸「新古演劇十種」からは「
「羽根の
八代目は4月に開幕した大阪・関西万博の開会式のパフォーマンスにも出演した。「歌舞伎の創始者である出雲の阿国は芸術を神にささげた。自分の身体を通して演じることは命をささげること。型を身体に入れていく歌舞伎は命の輝きでもある。異なる文化が交わり、命と命がぶつかりあって芸術が生まれていきます」
八代目尾上菊五郎、六代目尾上菊之助襲名披露 七月大歌舞伎 7月5~24日、大阪松竹座。昼の部は中村鴈治郎、
壱太郎 らによる「野崎村」と「羽根の禿」「うかれ坊主 」「髪結新三」。夜の部は片岡仁左衛門、中村錦之助の役替わりによる「熊谷陣屋」と「口上」「土蜘」。10、17日は休演日。 ☎ 0570・000・489。
(2025年6月11日付 読売新聞夕刊より)
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