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2024.12.3

截金きりかねの渦に吸い込まれて ― 伝統工芸「わざの美」展 12月9日から

重要無形文化財保持者(人間国宝)と、次代を担う若手作家の作品を紹介する「わざの美――工芸が織りなす装飾の世界」が〔2024年12月〕9~22日、東京・北の丸公園の旧近衛師団司令部庁舎で開かれる。陶芸や染織、漆芸、金工、木竹工、人形など多彩な伝統工芸の分野から計22点を展示する。

山本茜さん 47 截金ガラス作家

注目作の一つが、截金きりかねガラス作家、山本茜さん(47)が鳴門海峡の渦潮をイメージして制作した「渦」(高さ16センチ、直径10センチ)。瑠璃色の円すいガラスに浮かぶのは、反射や屈折でどこまでも続いていくような螺旋らせんを描く幾何学模様だ。

出品予定の山本さんの作品「渦」(撮影:鍋島徳恭)

截金は、重ねた金箔きんぱくを細く切って、貼りながら文様を描く技法。優美な表現で平安時代に発展・流行し、仏画や仏像などの装飾に多用された。

山本さんは、京都市立芸術大で仏画の模写に取り組んでいた時期に截金に出合い、独学で研究した後、人間国宝、江里佐代子(1945~2007年)に高い技術や美意識を学んだ。

画期的技法で制作

修練を積むほどに湧き上がってきたのは「截金そのものを主役にしたい」との思い。截金を際立たせるため、空中に浮遊しているような表現を目指してたどり着いたのがガラス。2009年に富山市立富山ガラス造形研究所に入学して寝る間を惜しんで実験を重ね、翌年、截金をガラスに封じ込める画期的な技法を完成させた。「小さな作品でしたが、すっごくうれしかった」と振り返る。 新たな地平を切り開いた山本さんは今、ライフワークの「源氏物語」シリーズなどで活躍の場を広げる。「截金とガラスの力でしょうか。完成作は事前のイメージを超え、それが制作の原動力になります。作品が、見てくださった方々の心に響けばうれしい」と目を細めた。

令和6年度文化庁首都圏伝統工芸技術作品展等開催事業
 「わざの美――工芸が織りなす装飾の世界」

【会期】12月9日(月)~22日(日)
【会場】旧近衛師団司令部庁舎(東京・北の丸公園)
【観覧料】無料
【主催】読売新聞社
【協力】公益社団法人日本工芸会

◇     ◇     ◇

関連イベントとして、東京・大手町の読売新聞ビル3階新聞教室で、出品者によるトークセッションが開催される。15日午後2時から、人間国宝の室瀬和美さん(蒔絵まきえ)と、漆芸作家・しんたにひとみさん。22日午前11時から、人間国宝の森口邦彦さん(友禅)と、竹工芸家・四代田辺竹雲斎さん。

申し込みは展覧会ホームページ(https://kogei-r6.com)。

(2024年12月1日付 読売新聞朝刊より)

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