「ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―」が〔2024年11月〕1日から、東京・麻布台ヒルズギャラリーで開催中だ。人気ゲーム「ポケットモンスター」に登場するポケモンをモチーフにした陶芸、彫金、染織などの作品を展示。人気の高い「ピカチュウ」をかわいらしくあしらった作品を出展した気鋭の陶芸家、桑田卓郎さん(43)は「美濃焼の量産技術を現代の工芸技術として構築させたいという思いで制作に取り組んだ」と話す。
人間国宝から若手までの現代工芸作家20人が参加する同展は昨年、国立工芸館(金沢市)からスタートし、国内外を巡回している。桑田さんは、あふれ出しているかに見える金・白金彩の釉薬にピカチュウを転写したカップや轆轤成形のボウルを並べたインスタレーション(空間芸術)作品を出展。「ピカチュウは現代社会を象徴する一つの存在。作品を見て色々感じてもらえれば」と言う。東京展では、陶土で作った金彩のタイルも追加した。
「見た人がウワッとなるものを作りたい」と常々考えている桑田さん。独創的な造形が国内外から注目されるが、奇抜さだけをアピールしたいのではない。学んできた美濃焼の伝統技法や量産技術の面白さを伝えたいという強い思いがある。
美濃焼の生産地で「陶都」と呼ばれる岐阜県南部の多治見市にアトリエを構え、制作拠点としているのもそのため。機械を使って手作業では作れない形を作り、伝統技法の梅花皮や石爆ぜを「今の時代に合ったやり方」で取り入れている。今回出展したカップは、動力成形で均整の取れた形にし、転写シートの最新技術でピカチュウを飾り付けた。
過激な作風と評されることもあるが、ベースにあるのは日本の陶芸だ。「野々村仁清(江戸時代の陶工)や北大路魯山人(大正~昭和期の芸術家)も時代がどんな作品を求めているか考えたと思う。自分もそうしたいだけ」
作家のそうした思いを作品から読み取るのも、ポケモン×工芸展の一つの楽しみ方かもしれない。
◇くわた・たくろう 広島県出身。京都・嵯峨美術短大卒。2007年、岐阜県の多治見市陶磁器意匠研究所を修了。22年、日本陶磁協会賞を受賞。ニューヨーク、ブリュッセル、パリなどで個展を開いており、国内外の主要美術館で開かれるグループ展にも数多く出展。近年は大型オブジェの制作にも取り組んでいる。
◆ ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―
【会期】2025年2月2日(日)まで。12月31日休館。12月26日から展示替えあり
【会場】麻布台ヒルズギャラリー(東京都港区)
【主催】麻布台ヒルズギャラリー、NHKプロモーション
【特別協力】株式会社ポケモン
【協力】読売新聞社
【東京会場サイト】https://www.azabudai-hills.com/azabudaihillsgallery/sp/kogei-pokemon-ex/
(2024年11月3日付 読売新聞朝刊より)
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