やわらかな曲線をえがく州浜に、ゆったりと波打つ海、ゆたかに
画面を大きく占める州浜の金、現在は黒ずんでいますが、制作当初は銀色に輝いていた波、松の緑が織りなすシンプルで明快な画面構成と色彩は、目にも鮮やかな印象を与えます。本図に描かれた海辺の光景は古くより和歌に詠まれ、また絵画や工芸の意匠としても、日本人に好まれてきました。
「浜松図屏風」は旧桂宮家に伝来した作品です。桂宮家は八条宮
本図に作者を示す署名や印章はありませんが、古くから桃山画壇の絵師で、狩野永徳や長谷川等伯らとならぶ
智仁親王の日記には、友松が絵画制作のため、1602年(慶長7年)からたびたび親王のもとを訪れていたことも記されています。さらに近年行われた修理で、1605年(慶長10年)にこの屏風を作った旨の墨書も確認されました。
これらから、本図は智仁親王の注文により、73歳の友松が筆をふるった作品とすることができます。
友松は豪快な筆致による水墨画を主にした中国画題の作品を多く残しており、本図のような金地に濃彩で描いたやまと絵画題の作例はきわめて珍しいといえます。優美で情趣あふれる表現には、親王の好みが反映されているのでしょう。当時の宮廷文化の華やかさを今に伝える一点です。
(皇居三の丸尚蔵館 展示・普及課長 戸田浩之)
開館記念展「皇室のみやび―受け継ぐ美―」
第3期「近世の御所を飾った品々」【会期】〔2024年〕5月12日(日)まで。
月曜休館。4月29日、5月6日は開館し、翌火曜日休館。
会期中一部展示替えあり。
【会場】皇居三の丸尚蔵館(皇居東御苑内)
【問い合わせ】050・5541・8600(ハローダイヤル)
(2024年4月7日付 読売新聞朝刊より)
展覧会について詳しくはこちら→
https://shozokan.nich.go.jp/exhibitions/miyabi.html
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