人間国宝の手による器で、ミシュランの料理人が作る料理をいただけたら――そう夢見たことがある人も多いのではないだろうか。そんな夢を現実にした催し「Kōgei Dining 」が、11月6日、東京・明治神宮「
2020年の東京五輪・パラリンピックに合わせ、日本の美を広く発信しようと政府が日本各地で展開する「日本博」の一環で、放送作家の小山薫堂さんがコーディネートした。「伝統的な技の継承とともに、革新的な創作につなげること、また、多くの人に工芸作品と触れあう機会を提供して、使い手と作家の豊かな出会いが紡がれていくことを願っています」とねらいを語る。
この日のために器を用意したのは、漆芸家の室瀬和美さん。2008年、重要無形文化財「
料理は「日本料理 龍吟」の山本征治さんが担当した。2012年から9年連続で「ミシュランガイド東京」で三つ星を獲得している、まさに日本を代表する料理人。ちょもらんま椀を使うのは今回が初めてといい、一目見たときの感想は「料理を盛ってほしそうにしている器」だったという。
会場となった桃林荘は、明治天皇第二皇子
料理の提供に先立ち、国立能楽堂プロデュースによる能楽
昆布やかつお節、干しシイタケ、干し貝柱、干しエビの「五つの乾貨」をうま味出汁のベースに、ニシンやフカヒレを炊きあげた一皿目から、毛ガニ、スッポン、サンマ、アワビ……贅沢な料理が次々と供される。日本の食材の豊かさ、ひいては自然の豊かさを表現したいという思いが込められていた。
そしてついに「メインディッシュ」のちょもらんま椀。白いご飯と、牛肉とマツタケの炊き合わせが盛られていた。室瀬さんは「漆椀に白いご飯を少しよそう。こうしてほしいなという、そのままの形でうれしくなりました。陰影の美しさがある」と笑顔で感想を述べた。
「漆器は取り扱いが大変なのでは、と敬遠されがちですが、後片付けも簡単です。ご飯粒が付いていたら水を張ってしばらく置いておく。ほかの食器を食洗機に入れるなどしていれば、椀に付いたご飯粒が柔らかくなります。洗剤を付けたスポンジで洗って、水切りかごに置いて自然乾燥で構いません。きれいなものは弱いと思うでしょう? 漆は美しくて強い器なんです」(室瀬さん)
山本さんは「本物に触れる」「本物を使う」ことの大切さを語った。使うことがなければ、技は継承されない。その意味では、使い手、食べ手も文化の担い手と言えるのかもしれない。
Kōgei Diningは11月21日(木)、京都・下鴨神社「供御所」でも開かれた。陶芸家で重要無形文化財「白磁」保持者の前田昭博さんが「白瓷捻面取盃」を用意し、「板前割烹 浜作」3代目主人で「現代の名工」に認定された森川裕之さん、京都・岡崎の「cenci」オーナーシェフ、坂本健さんによる料理をいただく。また、京舞井上流五世家元で、重要無形文化財「京舞」保持者の井上八千代さんによる舞が披露された。40人限定。盃は持ち帰ることができ、料金は8万円(消費税別)。申し込みは、高島屋京都店6階美術画廊で。
【主催】文化庁、独立行政法人日本芸術文化振興会
【協賛】ぐるなび
【特別協力】株式会社三越伊勢丹、株式会社髙島屋、公益社団法人日本工芸会、明治神宮記念館、下鴨神社、龍吟、浜作、cenci、下鴨茶寮
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