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2023.11.24

文楽 巡業でファン開拓へ ― 高級旅館で鑑賞・宿泊 

国立劇場建て替え

建て替えによる国立劇場(東京・半蔵門)の閉場に伴い、東京の文楽公演は少なくとも6年間、他の劇場を借りて行うことになった。公演日数が減る一方で、観光と結びつけた出張公演など、新たな可能性を模索する試みも始まっている。

文楽を上演する人形浄瑠璃文楽座はこれまで主に2、5、9、12月は同劇場、1、4、6、7~8、11月は大阪・国立文楽劇場で公演を行い、その合間に年間20日間ほど地方公演に出ていた。東京公演は今年〔2023年〕12月に北千住のシアター1010、来年2月は外苑前の日本青年館ホールで行うが、来年度以降の東京の公演日数は借りる劇場の都合などもあって「現状より若干減る見込み」(国立劇場)という。

2年前に引退した90歳の人間国宝の人形遣い、吉田簑助は「文楽は令和の大巡業に出ます」と宣言し、後輩たちを励ましていた。それだけに、これまで文楽とは縁が薄かった地域でもファンを開拓する好機と捉えた、ユニークな切り口の企画も進んでいる。

今月〔2023年11月〕28日には富山県高岡市の勝興寺で「国宝の共演」と題した公演が開催される。観光庁の観光再始動事業の一環としてインバウンド(訪日外国人)の取り込みも狙った公演で、昨年、国宝に指定された本堂で人間国宝の桐竹勘十郎らが「本朝廿四孝ほんちょうにじゅうしこう 奥庭狐火おくにわきつねびの段」などを上演する。すでにチケットは完売となる人気だ。

来年〔2024年〕2月18~19日には、静岡・伊豆長岡温泉の高級旅館「三養荘」で「春爛漫らんまんプレミアム文楽」と題した1泊2日の公演鑑賞付き宿泊プランが企画されている。ベテラン人形遣いの吉田勘弥がプロデュースし、宿泊客向けに「ひらかな盛衰記 神崎揚屋の段」を上演。鑑賞の助けになる事前レクチャーや、終演後は食事を楽しみながら人形を持っての記念撮影=写真=、技芸員と交流できる機会など、充実したサービスが用意されている。問い合わせ、予約申し込みは三養荘(受け付けは〔11月〕30日から、Tel. 055・947・1111)へ。

(2023年11月22日付 読売新聞朝刊より)

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