随心院(京都市山科区)所蔵の重要文化財「金剛薩埵坐像」は修理のため〔2023年〕4月、京都国立博物館の文化財保存修理所に向けて搬出された。
作者は快慶と確認されている鎌倉時代の仏像。修理を担当する「美術院」の門脇豊研究部長は「1965年に修理を行っているが、当時は表面の漆箔の剥離を止める技術があまり発達していなかった。今回の修理は剥落止めを中心とした慎重な作業になるだろう」とし、傷みが激しい部分に養生紙を貼り、梱包した。
随心院は、2022年度で修理を終え、この日搬入された「阿弥陀如来坐像」、21年度に修理を終えた本尊「如意輪観音坐像」を合わせて3体の重要文化財を所蔵している。
中本義久寺務長(65)は「金剛薩埵坐像は、快慶作ということもあり拝観に訪れる参拝者が多かった。きれいになって帰ってくれば3坐像そろっておまつりできる」と話していた。
紡ぐプロジェクトとは
国宝や重要文化財、皇室ゆかりの名品、伝統文化、技術などを保存、継承していく官民連携の取り組み。文化庁、宮内庁、読売新聞社が2018年に開始した。展覧会の収益の一部や、企業からの協賛金などを活用し、文化財の修理を助成し永続的な「保存・修理・公開」のサイクル構築を目指す。これらの文化財の魅力や修理作業の経過に加えて、次世代に伝える伝統芸能、工芸の技術などを、紙面やサイトを通じて国内外へ情報発信している。
(2023年6月4日付 読売新聞朝刊より)
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